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思いのチカラ 会社のチカラ

「理念」と「ビジネス」をいかに融合させるか。
マザーハウスの経営を通じてその両立を目指してきた山崎大祐が、
マザーハウスカレッジでの議論を中心に考えを語ります。

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第5回 思いのチカラ 会社のチカラ

思いの原点

2015.10.12

WRITTEN BY

山崎大祐 マザーハウス副社長

前回は、環境のチカラの話をしました。

環境のチカラが欲しくて、マザーハウスに来た。
これも本当ではあるのですが、やっぱりそこにはもう一つ、思いのチカラがあります。
今日はそこを書かせてください。

マザーハウスにはその誕生前から関わってきました。
元々、私はマザーハウス代表の山口絵理子のゼミの先輩で、
山口がバングラデシュで四苦八苦していたころから、色々と話を聞いていました。
実は山口の家族を除くと、初めてバッグを買ったお客様も私なのでした(笑)。

私たちの原点、バングラデシュにも、マザーハウスが生まれる2006年より前、
2004年に一度訪れています。その時のことは今でもクリアに覚えています。

私は大学在学中から、途上国に関わることをやりたいと考えていました。
そのきっかけは、19歳のとき、ベトナムにストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮りにいったこと。
母子家庭で育ったということもあり、生活も楽では無かったことで、
その延長線上で世界の貧しい子供たちを撮りに行きたい、と考えたのでした。

可哀想な子供たちが撮れるだろう、そんな安易な気持ちで行ったベトナム。
しかしそこにあった姿は全く想像と違うものでした。
確かにそこには、片道3時間かけて裸足でホーチミンまで来て、
一生懸命物売りとして生計を立てる子供たちがいました。
そして、売って稼いだお金はほとんどブローカーに搾取されてしまう、そんなリアルな姿がありました。

でもそれ以上に、自分の記憶に強く焼き付いたものは、明るい笑顔で走り回る子供たちの姿。
「ここに来るのは大変だけど、友だちもたくさんいるし、楽しいよ。」と言う姿でした。
僕のイメージと180度違う子供たちの笑顔がありました。
そして、そんな彼らに夢を聞いてみたのです。

「僕の夢は警察官になることだよ。」
「僕の夢はバイクの修理工になること。バイク大好き。」
「僕が稼いで家族の生活を楽にするんだ。」

目を輝かせて夢を語ってくれました。
日本の子供たちは、こんな素敵な笑顔で夢を語れるだろうか?
私たちは確かに彼らよりも経済的に豊かかもしれない。
でも、本当に未来を信じて生きているんだろうか?そう強く感じたのです。

日本に帰ってきて、ベトナムで感じた「豊かさ」とは何か?
という疑問が大きくなっていきました。
そして、豊かさとは何か、ということを勉強していくと一つの学問にぶつかりました。

それが「経済学」でした。

昔の経済学者は、目の前にある貧しさから、どうやったら人々が救われるのだろうか、ということを研究していきました。
その過程で、人間が豊かになるということは、どういうことなのか?ということに向き合ってきたのです。

私は経済学を学ぶことにのめりこみました。
しかし、それまで全然勉強もしたことない人間が勉強すると怖いですね。
勉強し始めたら勉強に取り込まれてしまい・・・
経済学だけではなく、哲学や思想の本も沢山読みました。
でも本には、「豊かさ」とは何か、という答えは書いていません。
自分が何をしたらいいかもわからない。学問にとらわれてしまい、ほぼ家に引きこもっていました。

一方で苦しくはありましたが、この頃に自分の問題意識も醸成されていきました。

途上国で頑張っている人たちはたくさんいる。夢を信じている人たちもたくさんいる。
でも構造がインプットされてしまっていることで、なかなか負のスパイラルから抜け出せない。
構造を変えないといけないのだと考えるようになったのです。

そんな時に自分の問題意識を刺激したのが、アジア金融危機でした。
一度の金融危機が、現地の人々の生活が一変してしまうということ。
金融市場は完全に構造化されています。そしてその構造を人々の努力で変えるというのは難しいこと。

金融市場に問題意識を感じた私は、金融市場のど真ん中で本当の姿を見てやろう、と心に決めて、
前職のゴールドマン・サックス証券のエコノミストという仕事を選んだのです。
そして、4年経ったら、アジアをバイクで横断する旅に出ようと決めていました。
21世紀はアジアの時代。自分の手でアジア経済に関する仕事をした後、
自分の足でアジアを横断すれば、きっと人生に繋がる何かが見つかるはずだと。

しかし、人は恐ろしいものです。
そういう問題意識は日々薄れていきます。特に2つのものがそうさせました。
それは、忙しさとお金です。前職の仕事には、その両方が揃っていたのです(笑)。
1年、また1年と時を重ねるにつれ、僕は何をやるためにここに来たのだろう、
そういう気持ちが芽生え始めていました。

そこで出会った3つのきっかけ。
それが、僕の問題意識を再び甦らせてくれたのです。

次回の連載で、その3つについて触れたいと思います。

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