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インドネシアのジュエリー物語

2015年10月から始まったインドネシアからのモノ作り「ジュエリー」。この連載ではジュエリーづくりの向こう側を、携わる様々なメンバーたちが、ありのままの姿でお伝えしていきます。

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第5回 インドネシアのジュエリー物語

線細工を18金でやってみたい

2015.10.30

ジョグジャカルタで、銀線細工に惹かれ、
なんとか職人のワリヨさんにまで行き着いた私たち。
そこで新しいモノ作りをはじめました。

「今までどんなデザイン作ってきたの?」
彼はシルバーの5cmくらいのブローチとブロンズの(もう既に錆びて真っ黒でしたが)
髪飾りのようなものを見せてくれました。

「あと、最近では街にあるお店のためにこんなのも作っているよ。」
シルバーの細かいデザインがいっぱいでした。
「なるほどー。細かいねえ。」
ただ、それは細かい、繊細という部分ではやはりすごいものがあるのですが、
モチーフがやや具象すぎて気持ちが悪いのと、
サイズがまだまだ日本人にとっては大きいのでした。

私は、どうやって新しいデザインを伝えようかと考えました。
まずは0.2mmのペンで方眼紙に絵を書いてみました。
「小さいな。まあでもやってみるか。」とワリヨさんは作ってくれました。
予想外に、早いスピードで彼は仕上げてくれました。
「じゃあ、次はこれはどう?こんなのはどう?」
一日に多い時は6つくらいのデザインを作りました。
(勿論研磨や仕上げはしていません。)

ただ私はあと一歩の曲線だったり、最後のねじる感じなどが
どうしても伝わらないなともどかしく思ったのです。

そこで、問屋さんにいって、ハンダゴテやペンチやピンセットを買ってきて、
ワリヨさんからシルバーとロウ剤をもらいました。
「自分でも作ってみるのが1番早い。」
バングラデシュでもそうですが、素人でもなんでも
頭のイメージを少しでも伝わりやすいようにするための
「プロセスデザイン」は非常に重要だと感じます。

まして異文化の人にとって言葉や絵だけで伝えるのは限界があります。
こんなやり取りを経て私たちは20も30もデザインを作ってきて、
次第にワリヨさんと息があってきたのです。
それはとても楽しい時間でした。

しかし、同時にだからこそ、新しい夢を二つ与えてくれました。

一つ目は、金で線細工をやってみたいということ。
もう一つは、金でやれた後に、サイズを更に華奢に繊細にするということ。

「ねえ、ワリヨさん。これ綺麗だからさ、
私、ゴールドでやったらもっと素敵だと思うんだよね。」
「ウマス?(インドネシア語でゴールド)金はやったことないよ。」
と即答されました。
けれど、少し考えてから彼は言ってくれたのです。
「前からやってみたかったんだ、勉強しながらやってみよう!」
と。

聞くと、貴金属の世界には明確なヒエラルキーがあり、
ブロンズ→シルバー→ゴールドと位があがっていくのです。
金を扱える職人は一握りでその難しさも扱う素材の高価さも他の貴金属とは違います。
ジョグジャカルタでは一般の職人さんは手を付けられないものでした。
まだはじまっていないのにワリヨさんの奥さんは
「うちの旦那を金をはじめるのよ!」と近所に言いふらしてしまうほど・・・・。

そこでまた喧嘩が勃発したのですが。
「ちょっと聞いてください。企業には守秘義務っていうものがあるんです。
金をやること、デザインの内容、全てにおいて守ってもらわないと困るんです。」
「????」本当に悪気がないような表情のワリヨさんと奥さん。

村では全部を伝え合うのが慣習。だからこそ助け合うんだそうです。
「なんと・・・。Warm heartとCool headのバランスがとても大事だなあ・・・。
そんな慣習は素敵だけれど、ビジネスっていうのは違うんだ。」
と彼らに伝えながらも自問自答したりしていました。
「いいバランスを見つけたい。」と心から思ったのです。
それは彼らの夢の実現、ビジネスとしての継続性、お客様の笑顔。
全部が離れた部分にある今だけれど、
モノ作りを継続しながら点と点を結べるポイントを探って行きたい。

ワリヨさんが人生最初の金にトライした日。
一気に溶かしてしまい、デザインが全滅・・・。
そんな記念すべき日から数ヶ月何度ものトライが続いて、
いよいよジョグジャカルタ初の金18の線細工が出来上がりました。

徐々に溶接ができるようになる、
徐々に太枠だけじゃなく、細い中身もできるようになる、
徐々に細かさが増していく。
そして、最後のトライは、その「サイズ」を更に小さくすることでした。

私は華奢で、素肌のようにさりげないデザインが好きでした。
「もっと小さくして!」というと
彼はぼそっと言ったのです。
「金は重いほどいいんだから、でかいほどいいに決まっているだろう。
貧乏だと思われたいのか!」
「・・・・・。」
なんとこんな大きな価値観のギャップが・・・。

「金はね、貨幣と同じなんだよ。何かあったら
持って逃げられるものだよ、わっはっは!」と笑っていました。
「私たちはジュエリーを作りたいの。貨幣の代わりじゃないんだ。
だから可能な限り、華奢で繊細なかわいさを身につけたいの。
最小のサイズに挑戦してほしいんだ。」
この議論の後、何度「クチル!(小さすぎる!)」と彼が叫んだか分かりません。

時には笑い、時には怒り合って、私たちの輝きはジョグジャの田舎の夕焼けみたいに
自然で温もり溢れるものになったと思います。

ワリヨさんが一言「お客さん、好きになってくれるかな?」

小さくても温かい循環をこの社会に作っていきたい。

最後に一枚の写真を。
「難しさも細かさも私も分かりたい!」と思ってワリヨさんの生産テーブルに向かう。
「確かに小さ過ぎて見えないわ・・・・。ぐにょぐにょ曲がり過ぎた。。。」

ワリヨさんに「7年はかかるわ!わっはっは!」と駄目出しをくらっている様子。
私がなぜか汗だく・・・。
この写真がなんだかこれまでのジョグジャカルタでの
私たちのモノ作りを物語っているなあと思いました。
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