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糸から始まる生地の可能性に「手しごと」で挑む

マザーハウスから、シャツ・ストール・セーターを中心とした新ブランド、ファブリックマザーハウスが誕生します。ミッションは「手しごとの未来を、途上国から世界へ」。
機械化・AI化が進むアパレル業界で、なぜファブリックマザーハウスは「手しごと」にこだわるのか。ファブリックプロダクトのモノづくりを担当し、事業を牽引し続けている田口ちひろへのインタビュー形式で、3日連続でお伝えします。

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第1回 糸から始まる生地の可能性に「手しごと」で挑む

素材が輝く手しごとでのモノづくりに挑む新ブランド

2018.09.04

途上国の糸から始まる生地の可能性をもっと伝えたい

いよいよ9月7日にファブリックマザーハウスが誕生しますね。

(田口、以下同じ)
はい、いよいよですね。
9月7日はたくさんの秋冬アイテムをご紹介する予定です。
また、日本でもイベントに登壇する機会をたくさんいただいているので、
この一か月は生産地と日本を、いつも以上に頻繁に行き来しています。

とっても忙しそうですね。マザーハウスはいつからファブリックのモノづくりをしているんですか?

マザーハウスは2009年から、ネパールでモノづくりを始めました。
ジュエリー専門ブランド、「ジュエリーマザーハウス」が立ち上がったのが2016年なのですが、
それよりもずっと前からストールの生産を続けているんです。

ストールの生産を始めて、もう9年も経つんですね!

そうなんです。
最初は、「小さい規模でも、ネパールだからできるモノづくりがあるはずだ」と思いながら、
毎年毎年、ネパールで様々な織り方や染め方に挑戦していきました。
そんな中、少しずつ、表現の幅を広げることができるようになってきたのですが、
同時に、商品のバリエーションが増えるなかで、バッグのお店の限られたスペースのなかで、
商品をすべて置くことや、世界観を表現することが難しくなってきました。

確かに、最近はストールだけでもたくさんのラインナップが店頭に並んでいますね。

はい、応援してくださっているお客様のおかげです。
そして、ネパールに加えて、インドのコルカタで、シャツの生産を始めることになり、
ストールとシャツをまとめて、「生地(ファブリック)」という切り口で、
ファブリックの魅力を伝えていきたいと思いました。

それでブランドを立ち上げるんですね。

そうですね。バッグやジュエリーとは異なるモノづくりの魅力や、手しごとのあたたかさを、
もっとお客様に楽しんでいただきたい、と思いファブリックブランドの立ち上げを決意しました。

でも実際にブランドを立ち上げるには、結構な労力がいりますよね。

そうなんです。
それでもブランドを立ち上げようと思ったのは、素晴らしい出会いが重なったからです。

出会いですか?

はい。生産地での出会いと日本での出会いがありました。
日本での出会いは、秋葉原にあるマザーハウス本店のすぐ隣りの場所が空き、
そこにストール専門店をオープンしたことです。
実は、当初はまったく違うコンセプトのお店になる予定だったんですが・・・。

そうだったんですね!でも結果的にストール専門店としてオープンしましたよね。

そうなんです!
ストールだけのお店ができることで、生産側にとっても、次のステップにつながるのではないか、
という想いから、マザーハウスのなかで初めてのストール専門店に挑戦しました。
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(ストール専門店 マザーハウスはなれのオープン時の写真)

生産地での出会いは?

まず、ネパールでニッティングアイテムをつくることができる工房と出会ったことです。
ネパールに駐在して7年たって初めて、国内で一番だと思えるほどの知識と経験のある職人さんたちに出会い、
セーターをつくることができるようになりました。
これまでやってきた「織り」に加えて、「編む」という表現が加わり、モノづくりの幅が広がりました。
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(リンキングというニット特有の技術で、職人が首元を仕上げている写真)

そして、去年の秋、インドのコルカタでカディという生地に出会ったことです。
ネパールのシルクストールと同じように、インドでは、現地で育った綿花を、
村の人たちが、手紡ぎ、手織りで生地にしていました。
「FABRIC OF FREEDOM(自由を勝ち取った布)」と呼ばれるカディ生地は、
歴史的にも意味があり、哲学の宿った生地で、シャツを生産することになりました。
これら3つの出会いが重なり合って、途上国の生地の可能性をもっと伝えていきたいと思い、
ブランドを立ち上げることになりました。

ミッションは「手しごとの未来を、途上国から未来へ」

ファブリックマザーハウスというブランドが大切にしていることはなんですか?

インドでカディに出会い、気付いたことがあります。
カディ生地は、気候や土といった自然によって、
世界の中でも貴重な、とても長くて細い繊維をもった綿花が育つため、手紡ぎで細い糸が紡ぐことができます。
そして、その細い糸は、機械では繊細すぎて織ることができず(機械だと糸が切れてしまう)、
人間の力でゆったり織るからこそ、生地がふっくらとして、表情が生まれるということを知りました。

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(カディの糸を織る職人)

カディの細い糸は手しごとでなければ生み出せないのですね!表情をもつ生地・・
なんだか”生きている生地”みたいですね。

はい、まさに生きている生地なんです。
そこから、繊維、糸づくりから始まるモノづくりの面白さや奥深さに
もっと向き合いたいと思いました。
世の中が大量生産に向かうなかで、工業製品ではない、
手を介して天然素材に向き合うモノづくりのかたちを、
マザーハウスとして社会に示していきたい、と考えるようになりました。
そのため、ファブリックマザーハウスでは、
「手しごとの未来を、途上国から世界へ」というミッションを掲げています。

ネパールでのモノづくりでも、同じような気づきはありましたか?

ネパールに駐在していたときは、手しごとのモノづくりしかなくて、
逆にそれが当たり前だと思っていました。
バングラデシュでは大きな工場をたくさん見ましたが、
ネパールは工業的な工場はカトマンズ市内にはなく、
みんなお家と変わらない建物のなかに工房を設けて、モノづくりを行っていました。

ネパールならではのモノづくりですね。

井の中の蛙のような状況だったのですが、日本に帰国した際に、
長年繊維業界で働かれている大ベテランの方にお会いする機会があり、
私たちがネパールでつくってきた商品を見ていただきました。
その時に、「機械製のものが当たり前になっている中で、
ここまで手作業でつくることができること自体がとても珍しい。
風合いも手織りならではのものが出ている。」とおっしゃっていただいたんです。
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今までやってきたことは、実はとても珍しいことだったんだ、と
ネパールの職人のみんなをとても誇らしく思いましたし、
機械製のものを目指すのではなく、もっと「手」を使った高い技術に挑戦していくべきなんだな、と
私たちが進んでいく方向性が見えるきっかけをいただきました。

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「手しごとの未来を、途上国から世界に」というミッションのために、
これからチャレンジしていきたいことは何ですか?

布の表現の可能性をもっと追求していきたいです。
糸から始まる生地づくりは、本当に無限にいろんな表現方法があって、
「この糸でこう織ったらどうなるのかな」と試行錯誤するのは、失敗も伴うので大変ですが、
生産現場にいるからこそできることですし、ネパール、インド、それぞれの職人さんの強みを活かして、
彼らがもっと技に磨きをかけていくようなモノづくりをしていきたいです。

手しごとの技術を高めていくこと、幅を広げていくことで、新しい価値を生み出していくんですね。

はい。
たくさんの服があふれている現代で、私たちがお客様にお届けできることは何なのか、
日々自分に問いかけています。単なるモノではなく、
身に着けることで、より自分らしくいられるような、肩肘張らずに自然体で、
日々の一歩を踏み出したくなる、そんなプロダクトをお届けしていきたいです。

第1回 素材が輝く手しごとでのモノづくりに挑む新ブランド
第2回 ネパール、インド、それぞれの国で大切にしてきた哲学とは
第3回 9/6(木)の公開です

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