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MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

デザインオフィス。

2016.08.05

昨日から私はデザインオフィスで働いている。

デザインオフィスとは、日本の事務所から歩いて
3分くらいのところのビルの7階。

聞くとすぐに「優雅だなあ」と思いますが、
実は昨今のバングラの治安悪化により、
出張延期を余儀なくされた苦肉の策でもある。

「日本でなんとか開発のペースを保たないといけない。」

神様は本当に、絶え間なく予想を超える挑戦をつきつける。

当然、1人で悩んでも仕方がない。
みんなと話し合ってこの危機と向き合い、
集中できる環境に加えてミシンや工具も手配してくれて
今日は6箱もバングラから素材資材が集まったのだ。

静かな部屋で1人、真っ白なテーブルと向き合って
目の前にミシンがある。
私は自分でできる範囲をこのオフィスでやろうと思った。
そしてラフな型紙を日本から送り、お金はかかるが
国際郵便でやりとりをするという方法を取ろうと思っている。

最初のオフィスの感想は「なんて快適なんだろう!!」ということだった。
ルンルンと音楽をかけながら型紙のベースとなるラフ案を
作っていた。

だけど、もくもくと進めていたら、いつも
型紙切っている時に一緒にいる工場のメンバーの不在に
予想以上に悲しさを覚えた。

私は、経営とかビジネスにはまるっきし自信がないけれど
とにかく現場でモノを作りきることだけは自分の最後のこだわりで、
10年続けてきた。その間、多分1000個くらい鞄は生まれたが、
一度も日本で商品を作ったことはない。

そのプロセスがオリジナルであることに私は誇りをもっていたし、
最終商品のオリジナリティはプロセスに宿ると思うことで、
焦りや不安の商品開発も、だいぶ現場にいるってことは
精神面でも支えになっていた。
でもそれが、今できなくなって、なんだかデザインを考えていても
心の底には喪失感が大きかった。

私はついつい、まるではかどってもないのに
チャットで生産マネージャーのマムンさんに話しかけてしまった。

「マムンさん。ケモンアチェン!(元気ですか?)
あのね、今日から日本のデザインオフィスが稼働したんだよ。」

「ああ、資材もついたんだね!他に必要なものがあったら
何でもリクエストしてくれ。」

「うん、ありがとう。でも私はなんだかやる気がわかないんだ。
みんながいないから。」

「気持ちは分かるけど、これはエリコさんにとっても
きっとプラスになるとボクは思っているよ。
日本で、お客さんの近くで、バングラよりももしかしたら
ずっとたくさんのアイディアが浮かぶかもしれない。
このステップは、マザーハウスにとってきっとプラスだ。
自信をもって。」

私は最後のYou should have confidence!という言葉に
涙がでてきてしまった。

「うん、がんばる。やってみるよ。今から型紙きる。
出来たら見せるからね。」

私は、新しいデザインオフィスでマムンさんのチャットの
メッセージを拡大しながら、スケッチを描いていた。

なんだか、周りにバングラからきた資材ばかりだから
両面テープや紐とか、段ボールあけるたびに
工場の匂いがして、その度にまるでもう会えないみたいに
しんみりとしてしまって「いかんいかん!」と
明るい音楽に変えていた。工場の匂いがにて、涙するなんて
私くらいかもしれないけど、とにかく「ああ〜工場行きたい!」という
思いをコントロールすることは私には相当なチャレンジだった。

でも同時に、悔しいなっていう思いが日に日に強くなるけれど、
そんな気持ちでモノを作っちゃいけないなって思った。

日本のみんなもバングラのみんなもこんなにたくさんの
サポートをしてくれていることに感謝の気持ちを持ちながら
モノを作ろう。

じゃないと、持ってくれるお客さんに申し訳ないし、
いいものはいい心からしか生まれないって思うから、
ハンディを強さに変えるまたとないチャンスだって
思い直そう。

とはいっても、いっつも工場のみんなに甘えていた私。
「ここ縫って〜」
「あれどこー?」
「片方持ってて〜」
みたいなこと、これから当面はぜんぶやるのは大変だな。

うじうじうじうじ(笑)

なんとか開発を進めながら帰り道に思った。

自分のペースでいいやあって。

焦らず自然の流れの中で、日本での自分のモノ作りの方法を
見つけていきたい。

そんな個人的にお客さんより楽しみな今一番会いたい人に会える日、
サンクスイベント8月20日。
少しずつ空席がなくなってきていますので
ご興味ある方はご覧ください。
//www.mother-house.jp/event-campaign/thanks/

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