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MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

黒いバッグ。

2016.03.19

「大変そうだなあ。」

日本に帰って、毎日地下鉄で通勤して私は
寒い日も暑い日もスーツきて、重そうな
荷物をもつサラリーマンを見ながら思う。

私は仕事でもスーパーカジュアルでぺったんこ靴に
バッグもリュックにして通勤しているので
まるで正反対。

冬が近くなっていた頃の帰り道、私は電車の椅子に座ってて
目の前に立っているサラリーマンの方の
手がバッグの取っ手を持ちながら真っ赤だったことが
あった。

寒かったからも知れないけれど、ものすごい沢山のものを
背負って、働いているんだろうなって感じた。
見渡せば黒いバッグの方ばかり。
「そういえば、“黒しか持てないから”って言うお客さん、
たくさんいるなあ。片麻痺の方のためにバッグ作ったのに
どうして私は、この人たちの為にバッグを作ってこなかったんだろう」
そんな風にふと思った。

サラリーマンの荷物を減らしたりすることはできないけど、
クタクタになるまで疲れて、少しシワが目立つ
スーツでも、バッグから、
「おつかれさまー」とか朝は「がんばってねー」とか
元気で優しい声が聞こえるようなバッグ、
作りたいなあって思った。

それから「この人たちの動く力をサポートする」ことを
深く考えるようになった。

新幹線で、電車で、飛行機で、ささってパソコンや手帳だけ
取り出せたら楽だろうな。

開けるときのジッパーはストレスゼロにしたい。

持ち手は慎重に固さと柔らかさと、アングルを決めよう。

出張の時、プライベートな荷物とお仕事用の荷物は分けられたらいいな。

最後に、大変な時も笑顔を忘れないでねって気持ちでMのロゴを特注しよう。

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手がコバで・・・涙。

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はじめてのグリーンの裏地をオーダー。

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モルシェド、これが多分11回目くらいの日の夜。

ここまでガチンコのメンズビジネスを作ったことが
なかったから、はじめる時には全部の要素は全くなかった。
でも型紙が出来る度に各要素での最適解を
出していこうっていう気持ちで挑んだ。
そして最後に拘ったのは、レディースでも同じだけれど、
私の場合は、フォルムだった。

「無駄がないフォルムを追求したい。」
その気持ちは機能を満たした後、爆発してきた欲望に近いくらい
強い思いだった。

ビジネスバッグだって、機能だけじゃないんだ。
最初の一瞬目に入るフォルムは絶対に妥協しない!
そのためには構造そのものの変更が必要で、
機能もそれに従ったりして、何度もフォルムと機能と
生産可能性を行き来していた。

気がついたら18個、同じバッグが並んでいた。

今思うと、思い出せないくらいの悔しさや絶望があったなと思う。
モルシェド(サンプルマスター)も同じように味わってきた。

でも完成品を見た時に、やっぱり「今のマトリゴールで最大限できること」を追求できたと思った。
バッグを持って、工場を走り回って、漉き機やコバ塗りのセクションに
行くんだけれど、その度に工場のみんなが新しい挑戦の誕生に
ドキドキとワクワクの目線を送っていた。

新作は本当に、工場の自己ベストを更新するためにある。
大変だったけれど、このバッグを作りながら、何ができなくて、何を伸ばさないといけないのか、本当に明確になった。

ありがとう。ブラック。そしてこれからも、働き、動く、
サラリーマンの方々の味方になれるようなバッグ、
作っていきたい。

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