「はじまりのバッグ展」始まり。
コロナ禍ではあるけれど、一つの企画展が本店(台東区)にて、スタートしています。(無料:終了時期未定)
2006年から2008年までの創業期のものづくりの変遷や素材との葛藤、デザイナーとしての哲学が主な展示テーマです。
題して「はじまりのバッグ展―2006-2008デザインとモノづくり哲学の変遷」
本店らしさを追求する中で見えてきた展示会という形態。
企画を進めてくれたみんなの熱量に圧倒されながら内容が徐々にできあがってくるプロセスは本当に楽しかった。
企画チームから投げられる山ほどの質問にも、自分なりに考えて回答してきたし、回答する中で涙を流してしまう時もあったほど、はっきり言って私の当時の葛藤や苦しみは半端ないのだ(笑)。
そして、創業期から作り上げたバッグたちが、今どこに存在するのかを追跡する作業は労力としても大きいものだった。
ご協力いただいたお客様、本当にありがとうございます。
(大事に当時のカタログまで保管しておいてくれた写真を見てウルっときました)
私は、この展示会が、はじめて手から生み出されたプロダクトと心から生み出された哲学が紐づく展示会になるのではないかな、と胸が高なっている。
本店の奥を改装して、この展示はスタートする。
最初に見えるのは、会社を設立する以前にバングラデシュの喧騒の中、「途上国から世界に通用するブランドをつくるんだ!」という想いだけで作った最初の160個のバッグの一つを展示している。
これは、2006年後半のカタログ。(まだロゴが古くて、型数が4つしかない)
ここでは、全部を披露することはできないけれど、起業してからの葛藤だらけの歩みを鞄と共に感じながら歩き、その時々で、工場の変遷、気持ちの変遷も表現した。
小さいが、「熱い」企画展になっている。
さらに、美術館って、オーディオガイドがあって更に面白さが増すことがよくある。
先日、この展示会を解説するための収録も行われたのでQRコードで私の低い声を楽しんでください(笑)。
自分自身の哲学やデザインを中心にしたはじめての企画展だが、なんだか遺書を書かされているような感覚すらあった笑。
重ね合わせることは失礼極まりないが、きっと、シャネルやディオールも、創業期の思いを言葉にすることを「ブランド」の確立期では大切にしたんじゃないかなって思った。
内に秘めた思いは誰だってすごく大きい。
けれど、それは、同じ熱量で言葉や、形、そして願わくば行動にしなければ意味がない。そして、時間が経てば経つほど色褪せて忘却されてしまう価値ある想いやエピソードは、全ての組織や企業でもきっと多いのではないだろうか。
15年目にして、ふとしたことがきっかけで、私の内にある想いを拾い上げようとしてくれた仲間たちには、心から感謝をしたい。
展示会の話に戻すと、全体を通じて、「精神を形にする」という作業を繰り返してきたことが私自身、感じたことだ。
私は、ふと「今自分ってどこにいるんだろう?」とわからなくなってしまう現代社会において、自分という立脚した礎をもっていられる理由として「形あるもの」を手掛けていることはとても大きいと思っている。
形から、精神を感じ、精神から、形をつくる。
この反復を行いながら、「マザーハウスの目指すもの」と、「自分とは何者か」を探し求めている気がするから。
何を作りたかったのか、なぜこの色なのか、どんな挑戦をもったプロダクトなのか。
ものづくりを通じてこそ、精神のど真ん中が透けてみえて、自分の弱さも丸見えだし、自分の子供っぽい部分や、反骨精神も丸見えだ。
私は新作を作り上げるたびに、「ああ、自分ってこんなに変化したのか」と思ったり「相変わらずだなぁ・・・」って感じたりする。
手を動かせば動かすほど、違和感があれば、それは自分じゃないんだ、って教えてもらって、また修正して、到達した時に「ああ、これが自分なんだ」っていう気づきや感動が本当に自分だけの小さな世界なんだけど起こっている。
2006年から2008年を特集した今回の展示会はそういう意味では今みると恥ずかしい気持ちで隠れたくなる思いさえするんだけれど、ふと、企画展のブースを抜けて連続する形で存在する本来のお店を見渡してほしい。
2006年から、2021年の場所まで、自分自身の成長はさておき、ものづくりにおいては遠く遠く歩いて来たもんだ。
いつだって、精一杯のベストを尽くしてきたと思ったのに。
分厚い部分を真っ直ぐ縫うことさえ難しかった当時、裏地が内側から数ミリはみ出て表に顔を出していた当時、いたるところにちょこちょこ糊の形跡をくっつけて出荷してきた当時。今思えば何万回、何十万回くらいかのため息をついただろうか。
でも今はっきりと言える。
きっと10年後は、今お店にあるものが展示会に置かれ、新しい世界で再びお店を埋め尽くすんだ。
こんなご時世なのでしばらく展示は継続していようと思っています。
(詳細情報はこちらです。)
早速、昔から応援してくださっている方がいらっしゃっていると聞いて本当に嬉しく、こうした思い出の接点をもてる機会をこれからも増やしたいなあと思っています。
今後ともよろしくお願いします。
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