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山口絵理子の日々思うこと。

11/5放送:カンブリア宮殿出演メモ。

2020.11.05

今日(11/5) カンブリア宮殿に出演させていただきます。
3年ぶり2度目なんて光栄すぎます。。

今回は「コロナで躍進するアパレル企業」という感じでインタビューを受けてきたけれど、私たちもいっぱいいっぱいな中で踏ん張っているのが正直な気持ちです。

毎年人質テロや地震が生産地では必ずあったので、危機に対する耐性はあるかもしれないけれど、コロナで頑張れている理由は、ずーっと前から、応援してくれているお客様がいることと、踏ん張り力が半端ないスタッフのおかげだと心から思っている。

コロナのこととは別に番組の中で印象に残った質問があった。

スタジオ収録中、(番組内で使われるかどうかはわからないけれど)村上龍さんから「30万円とかさ、もっと高価な鞄を発売したら??」と言われた。

スタジオではその時の気持ちを回答したが、そのあともずっと私には、何かがひっかかり、収録が終わってもずっと、ずるずるとその問いかけに対して、朝散歩をしながら考えていた。

(私はズルズル寝かせながら考えるタイプなので)自分が目指したいブランド像について龍さんの質問をきっかけに噛み砕きながら考える時間を頂いた。それが一番感謝しているところ。

「途上国から付加価値をつくる」という意味においては、素材代、加工賃、両方共に最高級のものを使い、最高に時間をかけて、一点ものの高級品を作ることは哲学に適っていると言えなくもないよなあ。

そしてその挑戦は、自分にとってもエキサイティングであるし、こうやってブランドが育ってきた今は、より現実的に何をどう料理したらその価格帯に届くのかはある程度イメージできるし、実際自社工場の技術力もそれに耐えられるようになっていると思う。

しかし、私は経営者でもあるし、デザイナーでもあるんだけれど、いつもどこかで一消費者としての目線や気持ちが胸の中にふつふつとあって、そこにどうしても矛盾するような意思決定を、「ビジネスとして」下すことが、なかなか心の底ではできないなあっていう時がある。そしてそこに自分の限界というか、問題点もわかってはいる。

収録の中でリメイク バッグである「RINNE — リンネ」が取り上げられた。(バナー写真)

あれはまさにコロナ禍の真っ只中に発売された商品。
あれを作りたいと思った時も、通常だったら春の新生活のためのパソコンが入るトートバッグの方が例年発売される時だった。
でも、どう考えても、私は消費者として「コロナで大変な時期に、買い物気分になれないよ」って思っていた。
在宅が始まって家を整理しながら「今は、新しいものを作るよりも、今ある資源を使いたい気分だよな」なんて思いながら要らなくなった洋服の生地でマスクを作ったりしながら、『いらなくなった鞄を回収して、リメイクしてみようかなあ』というアイディアが湧いてきて、散々悩んだ末に実施を決めた。

冒頭の質問に戻ると、「私は30万円の鞄を持ちたいわけじゃないんだよねえ。」ってどこかで思っちゃっている。
そう思っている時点で挑戦の幅を狭めていると思うんだけれど、でも、すごく本音。

30万の鞄を買うなら30万円分旅行に行ったり親孝行したりしたい・・笑。

育ちがそこまでよくないからなのか、鞄に使えるのはせいぜい、よっぽど気に入ったもので5万くらいが限度かなあって私は正直思っちゃう。そしてそんな自分の本音を隠し、ビジネスのために異なる価値観にすり寄ったりすることって、本当に超絶苦手で。

5万円でも買える人を制限しているとは思うが、30万円の鞄を買える人のためにマザーハウスというブランドはあるわけじゃない。もちろん、限定品や特別企画だったらいいかもしれないけれど、目指している方向性は明確に「“ハイ”ブランド」では絶対になくって、そうした所得層のためだけに工場を動かしたくない。なんだろこの反骨真みたいな気持ち(笑)。

ハイブランドの独特の香水の匂いと、重たい扉と笑顔を作らないドアマンと、強烈な入りづらさという世界観。これらは私の思想とは真反対にある。

もっと開かれたブランドにしたい、家を作るんだ!

そんな反骨真と渇望がありマザーハウス はバングラデシュの辺鄙な地域から誕生した。そうまさに、「途上国からブランドを」というテーマも、崇高な「貧しい人のために」ではなく、私の中では反骨心の塊なんだ。

これらは経営者として思うことであり、それに加えて、ものづくりをするデザイナーとして思うことがある。

いい素材を使う場合、形状記憶のために、鞄が重たくなる傾向にどうしてもあるのは許せないってこと。それよりも両手が使えて、体に負担がなくて動きやすい方が断然いい。もう主観の話なんだけれど。

そして使うシーン。
30万円の鞄は毎日の仕事にはちょっと持っていきづらい。ここぞという時のハレの日の鞄。高揚感がでるそんなオケージョンで多分使うと思う。
でも私はそんな「特別」な日の演出を作りたいわけじゃないなとも思う。

私は、毎日仕事に行くのが大変だなと感じる日も、頑張ろう!って気合を入れる日も、いつも伴走者のように寄り添う鞄を作りたい。
持ち物がたくさんあれば、それは重さがでちゃうけれど、なるべく体への負担を考慮した作りのものを提供したい。
私がリュックにこだわりがあるのは、背中で背負うという行為が一番体に負担がないから。
私のショルダーストラップが、ゆるやかな曲線を描いている理由は体と鞄の隙間を限りなく少なくすることで負荷を下げたいから。
そういう風に、人体への思いやりを持ちながら、鞄を作りたいんだ。

だから私はバッグの工場に、マネキン(人体)が置いてある。いつも体との関係性の中で3Dのプロダクトを作りたいから。(たまに職人の背中も使っている)
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持つ人にとって友達のような、伴走者のようなプロダクトであり、それらを内包した家のようなブランド、それが目指すべき方向性なんだと15年かけて言語化できるようになった。

マザーハウスは、今全世界で46店舗。
どのお店も、子供からご高齢のお客様まで本当に幅の広い世代のみなさんがお買い物を楽しんでくださっている。ご自身のためのお買い物される方がやはり一番多いが、次に多いのが、「家族間のギフト」。私たちの鞄が家族の輪の中に存在するなんて思うと、最高に嬉しい。

その人に寄り添う家であるという願望は、地球の反対側で作ってくれている人にも当てはまる。工場が「家」であるべきだと思い続けて自社工場をバングラデシュ、インド、スリランカやインドネシアといった途上国で運営をしてきた。
そこで作っている人たちの笑顔と、もってくれている人たちの笑顔が、空間、文化を超えて一致している状態を私は途上国と先進国を行き来しながら見てきた。

ベンチャーから成長する過程においては、時として仲介するスタッフ、販売員のみんなが笑顔じゃなかった時期も正直あったことを告白する。でも今は、実質の給与額も業界では上位になり、30代いかない店長で500万をもらっているスタッフも少なくない。

今ならば、自信をもって、作る人、届ける人、使う人の笑顔が一致しているなあって言える。そのことが一番誇りをもっている部分で、雇用を守り続けるという崇高な目標も、そこの一致がなければ実現しないわけで。

「三者の笑顔の一致」は、お金で買えないもの。いくら投資したって買えない。人間でいう皮膚や表面を整えても、血液がドロドロしていたらそれは循環がいつかは悪くなってしまうもの。だから、すごーく時間がかかる作業なんだ。

でも、だからこそ、私はそれ以上に贅沢なものはないなって思う。特に最近は、コロナで分断、格差が広がる世界の中で、三つの笑顔のハーモニーを奏でていくことを、改めて決意できたことは自分にとって一歩前進。

11か国のメンバーとブレーメンの音楽隊のように大行進しながら周りの笑顔を点検しながら、大志を忘れずに歩いていきたい。

龍さんからの質問で、私はまた目指すべき夢がちょっとクリアになって、本当に番組にも感謝している。

最高のブランドではなく、最愛のブランドを目指して。

私は相変わらず話すのが苦手なので、自分なりの番組の思い出としてnoteを書いておきたいと思いアップします。番組のご感想、ご意見など是非是非コメントくださいませ。

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