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山口絵理子の日々思うこと。

職人とデザイナーのエピソード。

2020.09.27

実は私のバングラデシュ自社工場の相棒、サンプルマスターのモルシェドが先週まで心臓発作で入院をしていました。

彼は私の目から見ると、バングラデシュで最高の鞄職人であり、私たちマトリゴールのトップリーダーです。

彼とはものづくりのタッグを組み始めてもう12年になります。

私の曲線、もっていきたい方向性が、ぐちゃぐちゃのラフサンプルからも読み取れる天才なのです。

いつも私とモルシェドは二人で99%のマザーハウスの全ての鞄を作ってきました。マザーハウスの「開発力」というのは私たち二人にかかっているから、家族以上に絆があり、泣いたり笑ったり、ずっと同じ気持ちで生きてきました。

数年前私は「売上を作る商品の呪縛」にかかっていてストレスで体調が悪くなっていました。そんな時も彼は「大丈夫だから、僕がコンセプトを形にするから」って何度も言ってくれました。

だから、そんなモルシェドが深夜に倒れたと聞いて、私はいてもたってもいられずに、コロナじゃなかったら即効飛行機にジャンプインしていました。

でも行きたくてもいけない。

翌日、上野の神社に健康祈願にいき、お守りを買ったんです。

それから、モルシェドさんは、妊娠中の私も負けちゃうくらいお腹が出ているので、きっと食生活が影響していると思い、モルシェドが元気になった時ウォーキングが楽しいように、かっこいいサンダルを買って、国際郵便で送ったんです。
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ソワソワ、ドキドキ。いつも工場長のマムンさんとモルシェドの様子を連絡しあってここ数週間いました。

そして、ペースメーカーを体に入れて、先日退院することができました。

大きな手術は一旦はしないでよかったので、それが一安心でした。

精密検査も全部してもらって、今は少し安心しています。

この前は、「ずっと家にいたらつまらなくて」と工場に退院後はじめて遊びにきました。

そして工場から、彼は私に電話をかけてきました。
それから1時間以上、私たちはベンガル語で本当にいろんなことを語り合いました。モルシェドは滝のようにこの1ヶ月のことを話すので、久しぶりの剛速ベンガル語に、ヒアリングがたじたじになりながら会話を楽しみました。

聞いていて涙がでたことがありました。

「僕はね、病院にいる数週間は自分の状態がどうなるかのことで頭がいっぱいだったけれど、後から病院の手続き、手術の同意書、全部が全部、マムンさん(自社工場の工場長)がサインしていたことを知ったんだ。」

彼は実は非常に田舎の出身で、お父さんは他界していて、お母さんはダッカ(首都)にでてこれそうもなく、5人兄弟で貧しい家族出身なんです。

モルシェドはお母さんには心配かけたくないと言っていて連絡せず、奥さんはペースメーカーの意義がわからず(医療や衛星に関する知識不足によるコミュニケーションギャップは、本当に途上国で、よくあることです。)

「体に機械を入れるなんて」と大反対で、そんな中、マムンさんがお医者さんのいうことを家族に丁寧に説明し、家族の代理を果たしていたのです。

マムンさんは連日私に報告をしてくれていました。

「手術費用はXX万円だよえりこさん。病院は心臓病の専門のところにシフトしようと思うけどどう思う?」などなど、モルシェドよりマムンさんが疲れ果ててしまわないか、心配になるほどでした。

その甲斐あって、心臓病専門の最高のところに入院してもらい、最高の
医師のもと最善を尽くすことができたのです。

費用ももちろん会社から負担することができて、
モルシェドは、「自分がこんな問題を抱えなければ、
自分がこんなにラッキーな人間なんだと、わからなかった。
みんながここまで僕のことを心配してくれるなんて・・・。マダム
わかる?ぼくの気持ちが。」と延々と話をするんです。

「わかったよー。みんなモルシェドが大好きなんだよ。」というと、

「そうなんだよ。でもね、人間ってそうならないと分からないんだよ。」

と力説が続きました。

でもそれは本質だなあとも感じました。

そして彼は続けます。

「僕はこの会社に入れて、マダムやマムンさんがいてくれて、
本当に恵まれているんだ。お医者さんが手術する直前も僕に
聞いてきたんだよ。君は田舎の生まれで、学校も出ていないのに、すごい会社で働いているなあって!!」と笑いながら自慢していました。

彼の久しぶりの元気な声と、ハイテンションな自慢話がかわいすぎて、ついnoteを書きたいなって思ったのですが、こういうことってなかなかスタッフにも伝えずらいんですよね。

最近はバングラデシュも進出する工場が増えてきて、「どこが違うんですか?」という質問もたまーに、お客様相談窓口にきます。

「雇用者数ならもっと大きいところありますよね?」とかって質問もきます。

私にとっては、数字は数字でしかなくって。うちの工場が漂っている空気感を全て言葉にするのはとても難しくて、毎回困ってしまうんです。

そして常々私が思っていること。

人間の温かさだったり、人間の創意工夫だったり、人間の愛とかって、数字やロジックや言葉で何%くらい説明できるのか、私はとても疑問なんです。

マムンさんが自分の業務ではない父親代わりをやっていること。

それって、企業のどこの資料にも載っていないし、工場長の役割の範疇にも当然書かれていません。

そしてそれを価値だと感じた従業員がいること。

そんなことは、ライン電話でしかわからなかったし、モルシェドと私の距離感だからこそ見えてきたこと。

でも確かにそれが、マトリゴールという工場の核心の強さであり最強の個性なんです。

そして、そういうことを私は工場をスタートして10年以上育ててきたわけで、私にはそれこそが「デザイナーだからといって、ものを作るだけが業務じゃないんですよねぇ〜」と答える理由なんですよね。

世の中、なにもかもが、説明可能なものじゃない。だから口より手を動かし表現する人が、職業がいて、人は足をつかい現場に行き、匂いを嗅ぎ、目を開いて対象を覗くのだと思っています。

私は、説明できない事柄を感じ取れたり、大事にできたりする人になりたいし、マザーハウスという企業そのもののDNAとして、本当に大事にしたいと思っています。

経営とかビジネスとかって、口がすごい達者な人たちに圧倒されちゃう時がたくさんある。

「で、データは?」「効率性は?」「数字の根拠は?」そういう言葉の前に、人間のもつ美しさや人間「らしさ」を却下しないでほしいって私は思う時がたびたびある。

感情が勝るといいたいわけでなく、単純に全てが数字で表せる世界に私たちは生きているわけじゃない、と思っていて。

だから口が達者ではない私は「ちがうのに・・・」と思いながらモノで反論できるものづくりの世界やデザイナーという職業が大好きです。

実は先日お客様とオンラインでつながる一年に一度のサンクスイベントを行ったのですが、そこで、いつも新作を私と発表するモルシェドの姿はありませんでした。

もちろん病院にいたからでした。私は笑顔で新作をマムンさんと発表していたけれど、Layという商品を彼と8ヶ月くらい作り続けた月日を思い出すと相方の不在に油断すると涙しそうだったんです。

だってお客様は、モルシェドのことを知っているからyoutubeのコメントで「モルシェドさんは登場しますか!?」って書いてあったりして。

「ああ、新作をこんなに喜んでいるお客様のコメントを見せたいなあ」ってずっと頭をよぎっていました。

この日電話口で、モルシェドは病院でそのライブをみていたと言いました。

モルシェドは「イベントのyoutubeね、携帯でみたんだよ。
(私たちが動画を合成することに挑戦していたので、まるで私が工場にいるようなシーンだったから)
最初みた時に、「あれ!マダムが工場にいるよ!!!ってすーーっごく
びっくりしたんだよ。最新の技術ってどこまですごいんだ!」って
興奮していた。

本当にかわいくって。。。。

そして、つい最近発売したLayのフランスで撮影されたプロモーションビデオを見て「あれをみた時は、最初僕たちの鞄じゃなくて、エルメスとか大きいブランドの映像を見せられているんだと思ったんだよ。」と言っていた。

かわいい・・・。

「やっぱり、あの白い糸はさ、大成功だったねマダム!」と。

作ってきた二人だからこそ、その時その時の判断、それに伴った勇気を振り返ったりできる。デザイナーと職人の関係って私は戦友みたいだと常々思います。

それは絶対に、経営のパートナー同士では味わえない類のものなんです。

「マダム、僕は第二の人生を送るんだ。」と最後にいうんです。
「なあに、第二の人生って。」
「もっと健康的な人生さ!」

その言い方が勝ち誇ったような感じで、爆笑しちゃった。

「・・・。そうだね、コレストロールとかちゃんとコントロールしなきゃいけない。だから送った靴で歩きなさい。」
「うん!!歩く歩く!マダムのチョイス(靴の)は最高だよ!僕が好きな色わかってるなあー!!」

最後に、彼は私に言いました。

「出産とは自信が必要なんだからね。ちゃんと自分をもって、挑むんだよ。」となんだか面白いアドバイスを私の大事な人生の友はくれたのでした。

退院直後のモルシェドとマムンさんはこちらです♪

(トップの写真は私とモルシェドのいつもの開発風景です。)
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追伸:彼と作り続けている商品紹介動画も久々にアップしました♪

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