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山口絵理子の日々思うこと。

店舗空間について、デザイナーとして経営者として思うこと

2020.06.10

このトップの写真は、最近オープンした私たちの立川グリーンスプリングス店です。ここには、e.という新ブランドのお洋服、ジュエリー、バッグ全てが並んでいます。

https://www.mother-house.jp/shoplist/tachikawa/
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この空間設計をご一緒させていただいたのはo+hさんという若手で大活躍の大西さん、百田さんのペア率いる設計会社です。

彼らは実は、マザーハウス の新工場建設にも携わってくれているのですが、日本の店舗をお願いしたのは初めて。
常に建築物を「人が集う場所」としてコミュニティの場作りとして捉えているお二人の感覚は新鮮且つ共感する思いで昔から密かにファンでした。
立川のお店の件が浮上した時に、「広大な敷地、緑がたくさん」というキーワードを活かす店舗設計とは何かを考え、彼らに依頼しようと決意しました。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「e.」の本店(台東区)は、巨匠藤森照信さんに依頼し、既にブルータスさんなど各紙にも取り上げられた都内で唯一の藤森作品となりました。

https://www.edot.jp/store

何より嬉しいのは、手紡ぎで織られた洋服たちは、手仕事の骨頂である藤森作品の中で、生き生きとプレゼンテーションされている点です。

edot_1

edot_2

びびっときた「建築家」に、どのような依頼の仕方で、彼らのクリエイションを発揮してもらおうか、ということは経営手腕としてもデザイナー手腕としても非常に難しい作業であると数作品を出店しながら感じている。

アーティストとしての個性の残し方、一方で、「いやいや、私にも商品の陳列空間には一言言わせていただきたい」と笑。しかし、社外アーティストとのコラボレーションは、今後も自分の成長にとっても最高の刺激としてやっていきたい。

さて、プロダクトデザイナーとして店舗とは何でしょうか。

私の中の定義、それは「Meeting Point」です。
商品とお客様が出会う場所。
そしてマザーハウス 創業者として思うことは、少し大きな話になりますが、個人的には「先進国と途上国が出会う場所」と捉えています。

はじめての人と出会う時、あるいは、会議やデートなどでも待ち合わせ場所によって、はじめての印象、1日の流れが異なるように、Meeting pointの空間、雰囲気次第で、私たちはその人、その物との出会いの印象、記憶、イメージは非常に大きく影響されていると思います。

「バングラデシュ の雑貨店」みたいな場所に私たちのバッグが置いてあったら、どんなにコバ塗りやディテールにこだわろうと、その「プレゼンテーション」による物の価値の下落は、激しいものです。

一方で、こだわった物が、こだわって作られた空間にバシッとはまった時の相乗効果はプロダクトデザインだけでは作り出せない価値を、お客様に伝えることができます。

それを考えていくと、お客様の視点からすると、物が物単体としての情報ではなく、お店に入った瞬間、棚板の色、質感、値札の紙、照明の暖かさ、そしてそこにいる店員の表情までもが、一つの「情報」として認知されるわけです。当たり前ですが、その総体として情報が、「ブランド」という塊としての情報になります。

私が、これまでほとんどのお店の設計に口出ししてきたり、「藤森さんに依頼したい!」「o+hさんで行こう!」などと意見を発するのは、その「総体」がお客様に届く情報の塊なんだと認識しているからです。

原体験としてあるのは、マザーハウスが卸ばかりしている時、セレクトショップでの配置の仕方、ディスプレイ、接客の仕方、全てに我慢ならなかった。

人はそれを「こだわり」と呼ぶけれど、それは「自分の中の美的なこだわり」ということとは、少しニュアンスが違う。
私がこだわっているのは、「お客様に何が届きますか???どうお客様の目にはマザーハウス、プロダクトは映りますか???」という問いに対してのこだわりである。そこを左脳的な人々はどうも勘違いして捉えるケースが多い。

「ああ、あの人は、美的にうるさいからね」という具合に。
美的にこだわる人には2種類いる。
感覚的に嫌だ、感覚的に好きだ、という主観が強い人と(あるいは強い場合)と、実は理詰で考えて、ここは美しさが優先される、と答えを導くタイプで、私は店舗空間とプロダクトの結びつきにおいては後者であることが多い。(プロダクトの場合は、前者の時も多いが)

そうして出会った、二人の建築家。

o+hの世界感と、藤森照信氏、二つの作品の共通点は何か。
それは「曲線」だ。そしてそれは、私のプロダクトの全てに存在する、私なりの意匠。そして、直線的な世界では成立しない温もりの形。

o+hさんは未来型の曲線、藤森さんは、古代から脈々と流れる曲線です。
私はどちらにも共感し、美しさを感じます。直線的幾何学の建築家が多い中では彼らの作品は、右脳的に、純粋に「好き」です。

店舗とプロダクトの融合ライン、meeting point を妥協せず、いかに美しく表現できるかは、アフターコロナでリアル店舗の価値がさらに見直される時代、実はプロダクトデザインの何倍も重要になることを多くのデザイナーは認識すべきだと思うんですね。

物だけ作っていても、届かない時代。デザイナーは、商品企画部から旅立ち、社内を縦断する旅にでかけた方が良さそうです。

最近感じていることの雑感・店舗バージョンでした。

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