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MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

「作る」から「届ける」へデジタルシフト

2020.04.05

みなさん、いかがお過ごしですか。

体調、精神面もお元気でしょうか。

コロナの件で全世界的にウイルスとともに混乱と疲弊と悲観が蔓延しています。
私たちは製造小売を10カ国またいで行っているので、各国の状況を追いかけながら、日本のことで四苦八苦する毎日ですが、スタッフ700名はみんな少なくとも物理的には健康であることに感謝する日々です。

チーム全体としてこの期間をジャンプするために沈んでいる期間だと捉えようと舵取りをしています。

「コロナが回復した時に、何ができるようになっていたら理想的だろう?」
「そのために、例えば2週間、3週間のロックダウン時期にどんなことに向き合えばいいのだろうか?」

そんな問いかけをマネジメント陣を集めて今日議論し、これから社内にも研修パッケージを提供しようと思っています。

私自身、「after コロナの理想的な山口絵理子ってどんな姿だろう?」と何度も何度も自分に聞きました。
最初は、混乱してて、頭が落ち着かないし、気がついたら携帯を見て、感染者数をチェックしたりとか本当に「焦るな危険」と言い聞かせる日々であまり目の前が見えなかった。

数日後に思ったことは、普段海外の生産・製造工場でデザイナーとしてフルに自分の価値を出せると思ってきたのに、「渡航」ができなくなった時点で自分の価値がシューんと萎んでいくような気がしました。
全てのものづくりを海外でやってきた自分にとっては現地語を話せて、型紙やモデルから自分の手で作れることはすっごく自分の誇りであり武器だったのに、「移動ができない」ってだけで、戦闘能力ゼロになる無力さ。。。

「自分、やばいじゃん。」
そう焦りました。
確かに私の肩書は経営者でもあるので、戦略や経営も大事だけれど、年間7割を過ごしてきた途上国にいけないことは、まるで自分の舞台がなくなったのと同じで、「あれ、、私どこに行けばいいのだろうか・・・。」と頭がパニックになってしまいました。

そこで気がついた本質的な自分の欠点。

それは「ああ、自分は作ることしかやってこなかったんだ!!」と。

私は、お客様とイベントをやったり、ゴールデンウィークには店頭たちをしたりとか講演会や取材を受けたりD2Cを自分なりにやってきたつもりなんだけれど、極端に自分が「作る専門」だという認識にいたった。

日本に閉じ込められた時にも、会社のミッションに対して忠実であり、価値ある成果物を収めたいと考えた。それは「作る」の反対側にある「届ける」という領域に参加し、本気で、そこをトライすることなのではないかと感じた。

店頭に立とうか。うーん、お店はロックダウンする可能性もあり、正直私がいることでお店にとっては邪魔だろうなとも思った。
ウェブサイトへの投資と戦略参画。うーん、正直ウェブチームに任せておいたほうがうまくやれるよね。
これまで私自身はあまり多くの時間を割いてこなかった日本の人材研修への参加。うーん、エリアマネージャーさんがきちんと戦略を作ってくれていて必要なら呼んでくれるらしい笑。
日本でもものづくり。うん、これはとてもやる気がでて、デザインルームがあるのでそこにこもって、縫ったり切ったりしていた。しかし、気がついた。今、工場も閉鎖していて、店頭は売上減少に困っている時、本当に新作を作ることが正解なのか・・・?

どれも違うなあ・・・と思った。

そんな心も頭も曇り空の中、ああでもないこうでもないと迷い続けた挙句、一つの自分の中で納得できる回答にたどり着いた。
「そうだ、作るだけじゃなく、ちゃんと話せて、届けられるデザイナーになろう。」

お店や事務所のスタッフに一切迷惑をかけない形で自分が最大のアウトプットを出せるだろうことは、「商品紹介をする」ことじゃないかと思った。

一つ一つの商品には正直、相当な思い入れがあってバッグなら4000種類くらい作ってきた。14年間で廃盤になったり循環して、今は200種類くらいお店に並んでいる。色展開もあるので純粋な「モデル」にすると40種類くらいだろう。
小物をのぞくと、バッグは30モデルくらい存在する。

私は、それらに対して、「デザイナーとして作った背景、コンセプト、こだわり」を一つ一つ丁寧に語ってみようと思った。
それはお店のみんなには商品知識となり、お客様にはお買い物した後でもデザイナーからのこだわりを知って頂くチャンスでもある。

作りにこだわってきた私は今、動画編集ソフトをトライアルで購入し、自分の携帯を三脚に設置し、お店から借りたバッグを持って、1人で商品紹介動画を撮っている。これまでマニアックだと嫌煙されてきた私のものづくりへの思いも、120%隠さずに披露している。(すっきりする部分もある笑)そして、話していて思ったのが、ものづくりの裏側には人生の哲学があり、必ず人間のドラマがある。

そう、わたしが決めたコロナ対策自分アップの方向性は、「作るデザイナーから、届けるデザイナーへのデジタルシフトだ。」

そもそも、ファッション業界のデザイナーという役割に、私は実は、これまでとても違和感があった。
それは構造的なものも大きい。企画、制作の部署とマーケティング、販売の部署の間には明確な分断があり、届ける責任は後者にある。
しかし、デザイナーの本当の責任、KPIとはなんだろうか。
私は、最も大きなKPIはやはり、届けた数だと思うのだ。であれば、部署を横断し、リアルにお客様のもとへ自らの言葉を発信することが今求められているはず。

「ショーを見ればわかる、物を見ればわかる」と取材にも対応しないビッグなデザイナーの人たちが今なお存在するが、その時代遅れ感とファッション産業の衰退は連動している気もする。

私は、経営者兼チーフデザイナーをしているから尚更そう思うのかもしれない。お客様のみならず、チーム、組織においても、ブランドのコンセプトが伝わるかどうかは、物を作っている中核にいる人々の「言葉」にかかっているところがある。
手を動かす人種の人たちは、言葉が苦手な人が多い。私もそう。

でも、勇気と覚悟をもって、「想いがあって作っているなら堂々と伝えてみたらどうか」と自分に言い聞かせた。

根底にある違和感は、パリコレを見させてもらった時だった。ひょこっとショーの最後にでてきてお辞儀をするデザイナーの姿、観客に一体何が伝っていたのか。言葉はなぜそこまで「悪」なのか?あるいは「不必要」だと思われているのか。今こそ、その違和感を自分なりに解消し、新しいデザイナーとしてあり方を作っていきたいと思った。

以上の憤りと覚悟をもって、私はこの度、「がちんこのマニアックな商品紹介動画」を皮切りに、デジタルシフト中。コロナ期間のメンタルの保ち方は、「打ち込めることを見つけること」だと思ったから。

ということで、昨日まずは4本アップしました。これから3日に1回アップしていくよ。是非チャンネル登録してね!笑。

では安全、安心な週末をお過ごしください。

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