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山口絵理子の日々思うこと。

大量閉鎖、大量解雇の途上国工場。

2020.04.21

現在多くのアジアの工場で、工場閉鎖、大規模な解雇が進んでいる。
日本では様々な批判はあるものの、休業補償、中小企業含めた補償金などそれでも先進国としての制度は一応存在するが、途上国においては、休業した工場に対して政府が何らかの支援をするかというと、そうではない。

完全に自己責任。よって、現在起きているのは工場の大量閉鎖、大量解雇、大量失業の巨大連鎖がインド、バングラデシュ などアジアの生産拠点で起きている。

私たちは、バングラデシュ で250人を雇用している。
バングラデシュ がロックダウンされる直前に現地工場長のマムンさんに現地の周辺工場の状況を聞いた。

「ロックダウンの発令に関わらず、すでに多くの工場は閉鎖している。だから他の工場にとってロックダウンは何の変化もない。とっくにバイヤーは発注をキャンセルしているし、とっくに多くの工場は閉鎖している。困るのは僕たちの工場くらいだよ。」という言葉が返ってきた。

途上国の多くの工場の仕事は「生産委託」だ。
多くのバイヤーが海外から安さを求めてバングラデシュ にオーダーを出す。
一度、自分たちの国の景気が悪くなった時には当然オーダーをキャンセルすればいいわけで、それは自然な流れであるが、ここに途上国の多くの工場が抱える脆弱性がある。

SPAという言葉は一般的に知られるようになった時代だが、それでも、私が知る限り「自社工場を自ら現地で運営する責任」をもっているブランドは、アパレル産業では非常に限られている。

SPAで有名な大手アパレルブランド(A社としておきます。)も、自社工場ではない。多くの生産工場に「委託」をしながら自らの企画を生産している。多くの場合、彼らの発注量は巨大なので、多くの工場においては「うちの工場はA社が9割以上」という事態が発生し、ほぼ自社工場のような位置づけになる。しかし、それと、リアルに現地雇用をし、自社工場を持つということとは似て非なることである。

私たちの工場は250人の雇用を守るために、まずは工場でこの10年間貯めてきた内部留保で当然給与を払い続けている。
日々ライングループで、健康状態を全スタッフ把握する。
一ヶ月が終わるタイミングでテーブルリーダーと幹部が集まり、ついこの前再び給与が支給された。また在宅期間、何かできることはないかと考え「バッグのデザイン画を描き提出するように」という課題を与えたりとマネジメントとスタッフ間の交流を絶やさない様々な仕組みを動かしている。

しかし、私たちは本当に例外的で、今バングラデシュ に溢れている失業者は、SPAと叫ばれる現代においても、ほとんどの途上国工場が「発注ありき」の状態であることが浮き彫りになった結果である。これが、世界の物づくりの上下構造であり、負の連鎖の根幹であり、私自身がマザーハウス を立ち上げた際の強い問題意識でもある。

では、その根幹を断ち切るためにどうしたらよいのか。

先進国の景気動向に左右されないためには工場が独立して販売力を持つべきだ、という意見がまず一つある。

バングラデシュ の工場の一部では国内のショッピングモールに小売店をもうけている工場もあり、私たちが提携しているネパールのストール工場もカトマンズ市内に自分たちのブティックを小さいが構えている。
ただ、バングラデシュの場合もネパールの場合も国内の富裕層の割合があまりにも小さく、結局は海外にいる顧客と、自力でエンドユーザーとつながれるか、という非常に難易度の高い課題が存在する。
しかし、そこに果敢に取り組むことがこれからの時代必要とされると私は思う。途上国は、固定電話の時代をすっ飛ばして、みんな携帯に触れるようになった。
経済格差は大きいのに、SNSの格差はそこまでない。これは、インターネットが誰にも開かれたものであるがゆえ。私は自分たちの工員たちのほとんどが英語が書けなくてもフェイスブックをもっていることに驚いた。
工場自身が、自分たちの商品をそれらを駆使しブランド化し、広く世の中に認知される努力を今回の件を教訓に、すべきではないかと思う。
自社ブランドの比率が1割存在するのと、100%受注生産なのとでは危機の時の生存能力に雲泥の差がでてくると思う。
顧客とつながる努力を工場サイドが自発的にすることで、コントローラビリティを少しでも高めてほしいと願っている。

そしてもう一つ、根本的に必要なことは、やはり「付加価値」のあるプロダクツを生産する職人集団であれ、ということが私の意見だ。

現在解雇されている多くの失業者の仕事は、アパレルの縫製スタッフ。正直、代替がすぐに見つかるスキルレベルの人たちだ。
結局機械でもできるような仕事、安さだけでオーダーをもらっていたような職種は、危機時に自らを守ることはできない。
フランスのメゾンブランドの職人たちが解雇されない理由は当然オーナーのスタンスもあるが、職人にクラフツマンシップがあるからだ。代わりがいない高度なスキルをもっているかどうか。
解雇したらそのブランドの付加価値を失うことになると判断されればこのような時代にも彼らは生き残れる。

結局は、途上国サイドの工場の自助努力と、そして1人1人のスキルアップが自らの生活を守る上で非常に重要だという結論になってしまうのだが、最後に。

コロナで工場休業、休業中の無期限での全額給与支給を、日本のような補償制度のない全ての生産地で私たちはやっているが正直、財務的に大きな負担であることは確かである。
しかし、根底にある私たちの思いは、彼らは家族のメンバーであるという思想だ。危機の時こそ助け合うべきじゃないか。それは、「生産拠点」として捉えている多くのブランドと全く異なるスタンス。

私たちには守らなきゃいけないものがある、毎日そう思いできる施策を打ち、副社長の山崎と共に戦略を議論している。
中長期的な視野に立った時に、職人みんなが、「あの時僕たちは会社によって守られた」と思ってくれることがあるとしたら本当に嬉しいし、みんなを守ることは、✖︎一世帯の人数分の生活を(多い時では10人以上)、守ることだとも思っている。
しかし一方で、そうした気持ちにさせるのは、1人1人の職人のスキルに私たちが惚れているからであり、切磋琢磨して掴み取ってきた彼ら自身の努力の賜物なんだということも、事実。

会社も、スタッフも、支え合っていく。
シンプルに、それができるかどうか、できるだけの信頼関係が存在するかどうかが、生き残れるかどうかに強く関係していると私は思う。

この危機で、多くのものを失うとしても、本当に大切なものを守り抜いた先に、強く温かい絆を掴み取ることができると信じたい。そう熱く思うほど、冷静に知恵を絞ろうと日々思う。頑張らなくっちゃ。

追伸:この前noteで書いたyoutubeでの商品紹介動画が結構増えてきました。
https://www.youtube.com/user/matrighor

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