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MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

すべての会社は世界に「貢献」している

2019.08.20

「社会起業家」って呼ばれるけど…
私は「社会起業家」と呼ばれることがあります。社会問題をビジネス的な手法で解決しようとする起業家のことだと聞きました。

ちょうど私が起業した2006年に、少額融資で貧困層を支援する事業をおこなっているムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞をとりました。

そのニュースも話題となって、社会で広まったキーワードだということを覚えています。

私は当時、バングラデシュでバッグ160個をつくって、どうにかして日本で販売しようともがいていました。

最初に「取材したい」といってくれたメディアのタイトルには「社会起業家」という言葉が含まれていました。

私はその意味をよく知らなかった…。

無我夢中で製造と販売をしていた私は、自分の身の回りで起きているトレンドや時代背景など意識する余裕もありませんでした。

その後も、とても光栄なことに、2010年にアントレプレナー・オブ・ザイヤーをいただいて、2011年のジャカルタで開かれた世界経済フォーラムにも日本の社会起業家として招いていただきました。
 
 
しっくり来ない理由
でも、実は私自身は「社会起業家」と言われることに、どこかしっくりきていないところがあります。

社会起業家が扱う分野は、途上国支援だけでなく、貧困問題、環境保護、高齢者支援。本当に多い…。

こうした社会課題を解決するためには、短期的な利益を追い求めるだけではだめです。だから、これまではお役所などの役割だとされてきたのだと思います。

だけど、それだとスピード感が足りなかったり、複雑な問題に対応できなかったり。

それに、日本を含めて先進国の財政も厳しいため、すべての問題に対して税金を十分に使えません。

そのため、ビジネスのアイデア力と資金力を活かして社会的な課題を解決する存在として、中間的なエリアを担う「社会起業家」が期待されているのだと思います。

最近では寄付や補助金だけに頼るのではなく、活動からちゃんとした利益を得ながら事業を回すビジネス型のNPOも増えてきたと聞きます。

また、世界的には、金銭的リターンだけでなく、社会にもたらす「よい経済効果」を大事にするファンドが進める「インパクト投資」という分野が注目され始めています。

社会貢献とビジネスの両立はここしばらくのホットなキーワードなのだと、社会情勢に詳しい方から教えてもらいました。

でもなあ、とも思うんです。

どんな企業だって、人を雇って

その社員本人や家族を支えているだけで、

あるいは税金を払って地域や国の運営を

手助けしているだけで、「社会性」はある。

どんな仕事でも、世界の一部に何らかの貢献をしている。

自分が携わったサービスや商品に、お金を払って買ってくれる人がいるということは、何らかの「困ったこと」に応えていることだと思うんです。

そういう意味では、社会性とビジネスは最初から両立しているものではないでしょうか。
 
 
経済力が社会を変える
企業のもつ影響力はとても大きいと思うんです。そして企業が利潤の追求だけに走らずに、公共性をもてるようになるためには、経営者のビジョンが重要になってきます。

故スティーブ・ジョブス氏にしても、孫正義氏にしても、「社会をどうしていくか」「未来をどうつくるか」というのが思考の中心だったのではないでしょうか。

経営者がそうした「よりよい社会」へのビジョンを明確にもっていれば、企業の利益と社会性は矛盾しません。

それどころか、経済力を備えた企業が本気で社会を変えたいと思えば、もっとも効率的にもっともパワフルに社会的なアクションを実施できるのだと思います。だって、企業は日々競争にさらされて生き残りをかけて戦略を立て、財やサービスを提供している主体だから。そんな風に思っています。

*このエントリーは『ThirdWay 第3の道のつくり方』から一部を抜粋してnote用に編集したものです。

(編集協力:宮本恵理子・竹下隆一郎/ 編集:大竹朝子)

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