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MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

曇りのち晴れ。

2019.05.31

「曇りのち晴れ。」

つくっている時に、ふわっと浮かんだこのコンセプト名。

素材から、形、そしてメッセージまでが一つの線でつながった瞬間、
本当に心が晴れたような気分だった。

記憶を辿ると、おそらく一年以上前。

「雨の日でも使えるレザーをどうしても開発したい。」
そういう私にやれやれというような顔をしたマムンさん。
撥水レザーは、原皮から変更しないといけないため、実験も簡単にはできない。

「プラスティックのようなコーティングならできるけれど。」
「だめ、革らしさを限りなく残して。」

強いリクエストのあと、なめし工場があげてくれたのは、
バリバリの「ザ・コーティング」な革だった。
「ほらー、水をはじくよー!」と彼らは無邪気だったが、
「これでいい鞄は作れないんだよね。」

素材と形が密接に関わるからこそ、
しなやかな撥水レザーができあがるまで、全く形には着手しなかった。
それから半年以上経過して、ようやく限界まで自然な風合いの撥水レザーがあがってきた。

「よし。」

そこからは「形や構造」の戦いがはじまった。

素材が生きることをとことん考えている私にとって、
雨に強い革がなりたい形がきっとあるはずだと、思っていた。

「せっかく雨に強いんだもの。
旅行とか、山登りとか、キャンプとか、うんうん、仕事でも、、、
とにかく雨でも外にでかけたくなるようなバッグ・・・」

私は考えた末にマザーハウス史上最も大容量のリュックに挑戦することにした。

「天気が変わりやすい、山の中でも対応できるような大きいリュックを作ろう。
撥水レザーの軽さも生かせると思う。」

そのコンセプトが決まってから、ようやく、型紙を切り始めた。
それからは、なぜか雨が降ると、街でも立ち止まって、
ぼーっと人々の動きを観察したりしていた。

雨が降ると、気分がさがってしまうのは私だけだろうか。
ふとそんなことも考えていた。

実は、開発途中で形が思うように決まらずに、
いつもの通りなんだが、苦しくて逃げ出したい日々が続いていた。
「コンセプトはこれだけ明確なのに、形が生まれない・・・」

貴重な撥水レザーを切り刻んでサンプルを作るほど、
どんどん暗い洞窟にはまっていってしまうようだった。

ふと空を見ると、雲がすごい速さで移動して、雲の切れ間から光がさし、太陽が顔をだした。
「いつか晴れる・・・。今、雨でも、曇っていても、いつか晴れる時がくる・・。」

私は自分自身にそう言い聞かせて、再びサンプルテーブルに向かった。
作りながら、切りながら、縫いながら、決めた。
「テーマは、曇りのち晴れ。撥水レザーの機能面だけじゃなくて、
心からのメッセージ。いつか晴れるから、前を向こう。
そんなメッセージを込めて、作ろう。」

いろんな不安を振り払って、作り上げたどことなく、
雲を連想させるようなふわふわした大きなリュック。

いつも工場のベストを更新するのが新作だと思ってきたけれど、
今季は特にデザイナーである自分自身も、
何か見えなかった太陽に出会えたような気持ちで、
この新作をお届けします。曇りのち晴れ。

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