MOTHERHOUSE

MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

コルカタでの会話記録

2018.09.02

今日は工房は通常おやすみなのにサンプルが終わらないため、
休日出勤してくれた3人がいた。

マスタージ(裁断)と、カゲシュとカピル。

マスターはコルカタ出身で残り2人はデリー出身。

私たちの工房はそのほかにも地方出身の人がいたり、
インドらしく多様性にあふれている。

今日少し静かな工房で作業する中でとっても面白いことを言われた。

マスタージが、私ができたサンプルを試着しているときに
「こんなに頑張って作ったから、名前をつけたほうが絶対にいいよ。」と言ったのだ。

「え?服に名前?」と驚いてしまったのだが、
彼の考え方って素敵だなあって心から思ったのだ。

人間の数以上に存在する衣服。

そこに名前をつけようって。

彼の言い分だとそれは商品名じゃない。

人の名前と同じ、宿る名前だ。

服の工房でそんな発言が生まれることって、信じられないなってドキっとしたけれど
言葉だけじゃなくて、心を込めて糸から衣服まで作ったら
それは、もう人間と同じくらい個性があるものだから、名前も絶対あるべきだね。

嬉しいなあって思ったけど、
カゲシュが言ったことも感動だった。

今日は、ミシンが空いていたので、カゲシュの前のミシンで私も
お遊びみたいに縫製していたのだが、なんとも心地よい時間だった。

職人って普段は無言でものづくりをするけれど、
少しゆったりしたペースの時は、手を動かしている方が、流暢になる(笑)。

カゲシュは縫いながら、ボソボソ後ろで何かを言っていた。

「へ?聞こえないよ。」と私も縫いながら聞くと

「このモデルよりあっちのモデルなら、会社として利益出ると思う。」

「へ?」

彼はなんと、素材の価格を比較して、生産性を考えて、そう言ったのだ。

「カゲシュ職人なのに、ビジネスマンだね。」っていうと照れてた。

「カゲシュは職人としてすごい経験があるね。」って続けて言うと
また照れて「ネエ。(ない)」と言った。

「何年?」と聞くと
「20年。」と答えた。

「は?何歳?」

30代半ばらしい。

本当の出身地はもっと田舎。小さい頃からミシン踏んでた。

「兄弟いるの?」

「お兄ちゃんが。」

「なにしてるん?」

「デリーで、検品している。」

「へ?服の?」

「もちろん。」

その”もちろん”って言葉に、服作りに対する家族のつながりを感じた。

「前の工場も輸出してたの?」

「うん。」

「どこの国?」

「よくわからないけど、きっとアメリカや日本じゃない。」

うん、多分、みんな、出荷した後のことはわからない。

でも私たちは、毎日の朝礼で、お店の売り上げを報告しているんだ。

一喜一憂、毎朝。

だからカゲシュは、「今日休日出勤なのにごめんね」と言うと
「なぜ謝るんだ?」と本気で聞いてきた。

「新作を作ることで、売り上げがあがらないといけないでしょう。」って。

私は、もう涙がでそうな瞬間だった。

コルカタ工房立ち上げから今まで、田口、後藤、スヤシリーダーを筆頭に
トラブルまみれの中で、戦ってきた成果は、
そんな彼の一言に表れているように思えた。

たった1人でも、そんな風に評価のためではなく、演技でもなく、
心から言えるスタッフが育ちつつあることは、
何よりも大きな成果じゃないかと私は思うんだ。

結果よりも、プロセスが大事って言葉は、まさにコルカタにあてはまる。

道のりは果てしなく遠くても、彼らの頑張りに応えられるプロダクトを
作りたいし、彼らが居心地がいいだけじゃなくって、
家族や田舎にも自慢できる工場を作りたい。

気づいたら帰宅していたカピルくん(笑)、作っていこうね。

追伸:サンクスイベントには、リーダーのスヤシが参ります。シャイな彼も、ドキドキな挑戦です。

メッセージを送る