MOTHERHOUSE

MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

ウチ・ノリ・ローカル戦略。

2017.09.18

“ウチ”とは、私が個人的にずーーっと昔から描いている一人の女の子だ。
私なのか?と聞かれるけれど、そうじゃない。

逆にこの子は、私を精神的に支えてくれている強い子だ。

小学校の頃から絵を描くのが好きな私は、どこでもいつでも何か描いている。

例えば移動中とか、夜中とか、カフェとか、ある時は株主総会でも退屈だと思うとノートの角にウサギを描いていてバレて大変なことになったこともある。

この子は確かマザーハウスが生まれて、すぐくらいに何の目的もなく生まれた。

最初は帽子とかはなかった。そして今よりもう少し表情は豊かだったが何度も何度も描いているうちに今の状態に落ち着いている。

でも、性格は最初からとても正確に決まっていた。
(この子はとっても臆病なんだ。)誰に言うでもなく決めていた。

(臆病で内気だからウチ、友達は犬のマッシモだけだ。
あんまり話さないから口は普通の時は描かない。
帽子はとんがっていて、服はワンピース膝丈Aラインで。
人間と動物だったり、性別だったり国籍も、この子は全てが平等、フラットに見えて、属しているのは地球ってだけ。
臆病だけど、強い正義感と好奇心をもって、世界を旅していく。マッシモはそんな中で計画性もあり論理思考もある一番の味方。)

時にはストーリーを加えていったりもした。友達を登場させた。
DJの犬の太郎とか、ダチョウのギャルたちとか、ふくろう先生とか。
ネクラな私はふくろう先生の色塗りを休みの日にすることが楽しみだったりした。
色塗りをして自分なりに物語ができあがると、紙を選んで記念に製本をしたりした。

たまに母に見せると「カワイイ!!」って言ってくれるから「じゃあ、あげる。」
って、そんな感じ。
絵やイラストは私の生活に寄り添い、ストレスが多い日常に何もかも忘れる幸せな一時を運んでくれる。だから「ウチ」には感謝している。

そんなウチは、これまでちょくちょくと私のトークショーの時に配らせてもらった本の「しおり」とか、11周年のキャラクターなどに登場してきたが、そこまで言及するほどではなかった。

しかし、数ヶ月前に、バングラに出張している時、台湾から国際電話を受けて聞かれた。

「ウチを全面に打ち出してやっていいですか。」

より現地に根付いた本当の意味でのお客様に愛されるブランドを目指して台湾のチームが日本の真似ではなく独自戦略として出した答えが「ウチ」だったのだ。

「え?ウチ?ウチは日本でもサブキャラだし、あんまり役に立たないと思うよ。」
私はそう言った。

「いや、可能性あると思うんですよここでは。」
長年台湾に住んでいるディレクター松岡の言葉はとっても説得力があった。

「で、具体的に?」

「ちょっと実物大で作るんで、何センチですかウチって?」

「え、ウチは120cmだよ。」

「分かりました。」

それくらいの会話で、私は今回の台湾サンクスイベントが迫ったので、前日に台湾入りした。

到着した台北市中山本店。
奥には事務所があった。
「ニーハオ〜」

カンブリアがあってバタバタしていて結構疲れていた。
事務所に入ると、なにやら布に覆われた、だいたい120cmくらいのオブジェがあった。

「これ、、、もしかして。。」

「はい。」満面の笑みの松岡。

私は疲れがふっとんで、胸が高鳴った。
リュックを背負ったままで、ゆっくりと布をあげてみた。

細い足がでてきた。

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「ドキドキ!!」

そして、そして、ウチだ〜!!!!

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そこには、私をずっと支えてくれていた
無表情で、でも自分をしっかりもったウチが、なんだかとてもニュートラルな雰囲気で佇んでいた。
2.5頭身くらいだ。
背中には赤いリュックを背負っている。
靴も赤い。

小さくてやや離れた目はすごく純粋に目に入る対象を捉えているように見える。
ワンピースのフレアな感じ、リュックの曲線も、普通のキャラクターものよりずっと崇高に出来上がっていた。

飛びついて抱きしめながら思った。

「よく産まれてきてくれたねえ。」

自分がテレビに出るのも不思議だけど、それを超える不思議さだった。
ずっとノートに描いていた人物が実際に現れるんだから想像できる?

そして、なんともう1つ大きなサプライズがあった。

私はウチの本を何冊か描いているのだが、その中で「夢見るバッグ」という
バングラ創業期の物語があった。

日本でも印刷しようとしてみたが、お客さんと合わないのでは、ということで
没になってしまった。

それが、なんとお店の半分のスペースを割いて、原画展が開催されているのだ。
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「・・・・ここまでしていいのか・・・。」

最初はとっても嬉しかったけれど、イベントの時間が近づくにつれ、
私はここまで振り切って大丈夫か、、、ととても不安になってきた。

午後14時。

サンクスイベントがはじまった。
「新しい仲間を紹介します!」と言って
貸し切った映画館で、ただ一人スポットライトを浴びた120cmのウチ。

大きな拍手と共にイベント後、ウチは数人に抱えられ、マザーハウスの台湾本店で初出勤を果たした。

お店の前にしっかり立ってくれていたウチ。
なんと彼女の前には一緒に写真を撮ろうとする長い列が!
更に道を通るだけで、お店には入ってくれない人もなぜかウチと同じポーズをとって、写真をとっている。
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最後はウチよりずっと小さな子まで、興味津々。
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原画展では、お母さんが小さなお子さんにバングラデシュの物語を丁寧に解説していた。
コクン、コクンと頷きながら絵を読み進める家族は、お店に温かい雰囲気をもたらしてくれていた。

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イベント後のウチは心なしかやや疲れていたように思う。

フィードバック会が行われた。

スタッフの一人が言った。
「なんかウチがかわいいから、準備している時も何だかテンション高くて、楽しかったんだよね。」

私はなんだかこの答えに本質があるなあって思った。

結局、全員の「ノリ」がよくなったんだと思った。

ノリっていうのは本当に大事で、
リズムと勢いがある状態。

最近日本でも議論しているキーワード。

それを生み出せる人は限られていて、頑張り屋さんの人ほど真面目で
シリアスになりがちなんですよね。

私の周りでノリを生み出す能力が最も高い人は、山崎大祐だ。

創業期はそれによって何度も過酷な状態をチームでハイになって乗り切ってきた(笑)。

30店舗のチームを見てきて、「良質な」ノリの高さと、
店内の温度感の高さとお客さんの滞在時間の長さは
比例する。

そういう意味で「ウチ」が生み出したものはとても大きい。

そして、そんなウチを生み出した、ノリの張本人である
松岡はじめ台湾チームは本当に素晴らしいチームなんだと思う。

たくさんの勇気をもらったし、例え失敗したとしても新しい試みによって
得られることを思えば今の時点でプラスだ。

「最初ウチの等身大のアイディアを笑いながら話していて
でもまさか本気でやるとは思わなかった・・・。」

「いや、決めたらやるでしょう。」と別れ際、まっちゃん(松岡)が
さらりと言った。

ノリは乗り移る。
台湾で唯一エリマネを務めるYoyoというスタッフがいる。

彼女に「どう?」って聞いたら「今のチームだったらいけると思います。」と
はっきりと応えていた。
これが全てを証明しているように思えた。

加えて最後に、新作Kazematouが台湾でもブレークしている。

プロモーション、プロダクト、そしてチームの足並みが整った台湾、
時差があるかもしれないけれど必ず結果は伴ってくると信じている。

お決まりの写真を最後に。
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