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MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

0を1に、な日々。

2017.09.09

ネパールの出張が終わった。

本当に楽しかったというか、充実していた。
形になったものはあんまりないけれど、私にとっては
0を1にするその小さな一歩を踏み出せたと思うから
◎だ。

私は、月に2回は、だいたい、そして毎月海外出張に行くのだが、
そのときそのときでミッションが違う。

ミッションによって、若干重い気分の時もあれば、
胸が高鳴る時もあって、今回は断然に後者だった。

全く新しい工場に入っていった。

出会ってすぐのネパール人の職人さんと、会話をして、
モノをつくりはじめた。

彼の手をどれだけじっと見ていただろう。

その動きが美しいほどに、「うーん」と唸りながら。

彼にとって私ははじめて一緒に仕事をする外国人だった。

私は誰かなんて何も言っていない。
デザイナーであるともCEOであるとも、日本人らしいということだけ
彼は知っているだけ。

それが心地いい。

彼の手をみながら「まって、それどうしてそうやったの?」と
私は何度も聞いた。

ネパール語でも、モノ作りの言葉なら理解できる。

一日に何度も、素人のような質問をした。
呆れていたかもしれないし、無口な彼の胸中は知らない。

三日目。私は彼よりも早く工場についた。

そして、彼がやっていたことを思い出しながら、
同じ型紙をひいてみた。

前の日の夜、頭の中で展開図をイメージしていた。
彼がどうしてあそこをああしたのか、ということを
理解したかったから。

それで、理解できたと思ったから、
彼に事後報告で彼の型紙の用紙を1メートルもらい、
私は2時間で完成させた。

彼が到着した。

「作ってみた。」

彼は目をパチクリさせていた。

「君が?」

「はい。」

「いつ?」

「今朝」

「・・・・。」

「まだ修正がある。」

私はほんの少し気になる部分があったので
消しゴムで消したりしていた。

そこへ社長さんが来て、私を笑った。

「あはは、何やっているんだい??お絵描きかな?」って
言われた。

少しむかついたけれど、
「まあ、そんなもの。」とボヤって言った。

そしたら無口なマスターがいきなり怖い顔で社長さんに言った。

「パターンだよ!細かい部分は修正あるけど、ほぼ完璧だぜ。」

私はそれを聞いて、なんだかちょっと涙がでそうだった。

「赤ペン入れて。どこが間違えたのか知りたいから。」

すぐにそう言うと、彼はものすごく丁寧に教えてくれた。

「はい、はい」って私は彼の指導を学んでいった。

次の型紙に着手した。

そして彼はまた赤ペンを入れた。

そして次も。

そして次のやつは
「これは簡単だよ。」って私が言うと
「そうかな?」って彼は少し楽しそうに私の手を見ていた。

国境を超えて何かを共有する、というと何だかメンタルなイメージや
コミュニケーションのイメージが一人歩きする。

現実は違う。

国境を一番早く超えるのは、スキルだ。

言葉と技術の二つ。

私は、現地の言葉が分かり、3Dを作ることができる。
だから自信ではないけれど、ある程度は形にできるとどんな国に行っても
思う。

だけど、今回はまるっきりはじめてに近いプロダクトだったことと、
マスターがすごく無口で、質問ぜめの私は少しうるさそうに思っていた。

だからマスターに褒められて私は、とびきり嬉しかったんだ。

先生に褒められたことはあんまりないけど、
きっとこんな気持ちなんだろうと思う。

「嬉しい!嬉しいよ!」って社長さんがいなくなったら
私はガッツポーズしてた。

彼は笑って、次の型紙をくれた。

気がつくと少しずつみんなの目が変わっていて、
女性のスタッフが「はい、これ鉛筆用意しておいたよ。」って
次の日渡してくれたんだ。

やれるかな、やれるかな。毎日工場に行くたびにちょっと緊張していた。

でも、手が動きだせばみんなフラットな関係だし
手が動き出せば、少なくとも、後退はしない。

数々の失敗をすること、それが来た意味じゃないかって思いながら
進んだ。

そして、それだけは叶えて、出張は終わった。

こんな日々が、何もないところから形をつくる
何気ない、けれど、とても意義深い一日。

種を巻いて芽が出たら、「ハナレ」に置きたい。

そんな日を夢見て。

ネパールの太陽の強さや笑顔、プロダクトを通じて、更に届け。

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