MOTHERHOUSE

MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

セッション。

2017.05.22

最近はサンプル作成で朝昼晩とモルシェドと共に時間を過ごしています。

この前書いたように、近くに日本の素晴らしい職人さんとの出会いがあったので、
なんだか今回の滞在は、日々技術の進歩と切磋琢磨に溢れています。

国籍や文化や背景も異なる二人の職人さんを間近で見ていて、心震える瞬間が何度もあった。

この前は革漉き(革を一定の厚さに薄くしたり、傾斜をかけて薄くしたりすること)の技術を
伝えに日本の職人さんが来てくれたとき。

モルシェドも日本の職人さんも英語も、勿論ベンガル語も話す事はないですが、
道具と素材を使って、私ができるコミュニケーション以上の心のやり取りをしていた。

「これはこれを使うといいかもしれない。やってみよう。」と職人さん。
頷いて、手を動かすモルシェド。
そして実際に出来た瞬間、二人は笑顔で握手する。

そして逆にモルシェドは道具がない中で培ってきた技術がある。
それを見て日本の職人さんは「Great!」と言って、また握手をする。

国籍を超えて、そして二人の職人が30年、40年と積み重ねてきた経験の結晶を
交わし合うその風景は、小さな部屋の中で行われていたがあまりにも壮大で、心が震えた。

私は「セッションですね。」って言った。

その言葉がぴったりだねえって職人さんが言ってくれた。

そう、まるで音楽みたいだったから。

そこには正解があるってわけじゃない。

俺はこの音が好き。俺はこの音もいいと思う。
二つが合わさったらこんな音色が生まれた。

今まで聞いたことがない音色はすごくながーくふかーく、響くんです。
職人さんが帰ったあと、モルシェドの型紙のスピードが圧倒的に遅くなった。

今まで考えてきたスケジュールが全てひっくりかえるんじゃないかと私は1人で思っていた。

結構迷っていた。

新しいことに挑戦したいモルシェドがいて、それはものすごくウェルカムなこと。

一方で、全社のスケジュールを考えると守らなきゃいけないものもある。

いつだって、二つの異なることの両立に私は向き合ってきたけれど、新しい組み合わせだった。

夜、ようやく、私は言った。
「もう少し、、スピードあげられないか?」と私は聞いてみた。

彼はその時、ものすごく、びっくりして、「ワッ」って手にもっていた型紙を
離してしまって、それが机に落ちた。

私はそれを見て、驚いた。

今まで見た事がないほどの集中力だった。

頑張ろうとか、新しいクリエイションだ、とか色々とモノ作りへのモチベーションを
あげる要素はこれまでもたくさんあったし、それらを私はデザイナーとして彼に
与えてこれた自負はあった。

でも彼自身もきっと分からなかったほどの、火を心につけてくれたのは、
『同じ職人』さんだったんだ。

人は一人では成長できない。

絶対に大事なことは、切磋琢磨できて、壁打ち相手になれる人、なんだと思う。

そういう人を見つけられたら、日常はまるっきり変わって見える。
そして自分が思っていた自分以上に力を引き出せる。

同質なものが集まるのではなく、
そんな化学反応が社内でも社外でもどんどんできるようなブランドでありたい。

変化に、感謝。だからこそ、変わる事を、恐れるな。

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