MOTHERHOUSE

MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

バトン。

2017.05.11

昨日、私は日本において生地作りのプロ、
そのレベルも、ここでさらっと書くには衝撃的すぎる方に
ご縁があってお会いでき、夜中まで素晴らしい時間を
過ごさせてもらった。

目からウロコどころか、耳や口からもウロコだらけみたいな、
体中でモノ作りの神髄をしびれるほど聞かせて頂いた。

衝撃的なこの数時間で、私が感じた事は、すごくチープな
言葉なんだけれど

「こうした人が、日本を作ってきたんだなあ」ってことだった。

モノ作り大国と呼ばれるほどになった舞台裏に
こういう人がいたんだ、って私は日本の強さの秘密を感じた。

それまでは日本がモノ作り大国、まじめで品質に厳しい、島国で競争が
激しかったから、みたいなものすごい表層で捉えていた。

しかし、本当は違う。

現場レベルで、生地の場合は、糸の撚り、番手、繊維そのものの構造の改革に
立ち向かい、未来を切り開いていきたいと燃える私の父親の世代の
みなさん1人1人の力の集合体が、モノ作りニッポンなんだ。

この前の鞄の職人さんもそうだけれど、偶然にもバングラに
テロのために行けないので日本にいて、広がったこうした
出会いが重なっている。

モノ作り=日本なんてもう大昔の話し、とみんなは言うけれど、
だったらそれを作ってきた様々なピース、そしてDNAは
今、どこに行ってしまったんだろう??

私の目の前には、そんな職人さんたちは確かにいる。

この宝物のような現場の、生の経験、泥臭い実験の連続、
そこから生まれる人間性の高みというバトンを
私たち世代はちゃんと握ろうとしているのか。

私個人で言うと、本当に恥ずかしながら、このブログで書いているように
35歳になってはじめてその役割が私たち世代にあることに
日々気がつきはじめている。

(ああ、自分にできることはなんだろう・・・・。)
最近毎日そこを考えている。

その方が最後に仰った言葉は力強く印象的。

「全ての問題には基礎がある。そこを掴むんだ。」

基礎とは、素材そのものとの向き合い方だと思う。

革、生地、糸、石、金。

途上国のモノ作りと関わってきて自然と私は常に
それら素材たちをいつもコネコネしている。

それは苦しいものでもあり、楽しいものでもあると
感じていたけれど、
モノ作り大国を作った先輩たちは、コネコネしたあとに
叩いて、つぶして、燃やして、再形成して、縮ませ、
加工し、もうありとあらゆる向き合い方をして、
本質の魅力を探り当ててきたんだ。

最後に私は質問した。

『50年後、100年後も存在するモノ作りってなんだと
思いますか?』

その方の答えは自分の中にしまっておきたい。
形で継承していくのが私のやり方だから。

そして言ってくれた。

「マザーさんがやっていることは大正解だ。
(その方はマザーハウスのことをマザーさんって言ってくれる笑)

現場で3Kやってるんだろ!!あっはっは!

ネパールのストールなんていいねえ!

ロウシルクなんて最高だよ。

家で育つお蚕様とワイルドな自然で育つ
お蚕様は口から出す糸が全然違うしね。

ちゅーーって感じて伸びて、ワイルドなやつらは
歯がギザギザ!
だから糸もギザギザだよな。
(そういって、蚕が口から
糸を出すジェスチャーをするのがとても上手だった)

まあ、そんなものに近づくために俺らエンジニアは
わざわざ化学し、投資し、必死なのにさ、あいつらは
自然にそれができちゃうもんな。

まあ、とにかく今時そんなことに向き合う若い人たちは
なかなかいなくなっちゃったのにさ、今日の出会いに乾杯!

最高に気持ちがいい酒だ!」

まるでドラマに出てきそうな豪快な方。

でもそんな言葉とは裏腹に、その方は工場の休憩中も
素材の研究書を今でも読みあさると言う。

「勉強は終わらないから。」って静かに仰った言葉に
私は異常なくらい重みを感じて、なぜか涙がでそうだった。

別にモノ作りだけに限らない。

一流の人たちは、一流の努力をしている。

それに尽きるんだと私は思う。

そうした魂も含め、
世代から世代へ、私たちは何を受け継ぎ、何を刷新していくべきか。

考えている間におばあちゃんになりそう・・・。

かいこさま

メッセージを送る