MOTHERHOUSE

MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

もの作りの日々。

2017.04.04

モルシェドとのサンプル制作が今日がラスト日。

この2週間、一日10時間くらいいつも一緒にいた。

その間完成までもっていけたものは、とても少ない。

いつもゼロから何かを作るとき、ものすごい悩みと葛藤の連続で、
私はモルシェドが一生懸命作ったモノを翌日にほどき、切り刻み、
最後は跡形もなくなり、もう一度最後は最初の原型に近くなり、
また壊しを続ける。

毎朝、昨日の夜作ったモノを見るのがとても怖い。

「やっぱりだめか。」って思うのが怖い。

でも翌朝見ても、昨晩と同じ心地よさを感じるものは、生き残ることが多い。

そんな淡い期待で毎朝バッグと緊張しながら面会する。

日本で開発をやるのは2回目で、テロや治安の状況があるため応急処置ではあるが、
勿論、生産はバングラデシュだから工場のみんなにバトンを渡す覚悟でトップの職人
モルシェドは日本へ来た。

「秋冬を仕上げる」という大きな目的をもって。

しかし、ラスト3日になっても何も仕上がらない状況にさすがの彼も三日前に言った。

「マダム、本当に今日壊したら何もぼくはバングラデシュに持って帰れない。
ぼくの目的は達成されないよ。こんなにお金をかけて日本にきたのに。」と
彼はいらだちとともに言った。

その背景には、毎日工場からかかってくる電話があった。

「何個つくったんだい?!」と彼らはモルシェドに聞く。

「・・・・うん、まだ一個も。」

そう言う彼は申し訳なさや自分の役割に対してできていない悔しさでいっぱいだったんだろう。

だから、ついに私にそんな言葉を言ったのだった。

私はそれを聞いて、深呼吸をして彼に言った。

「モルシェド、数なんか問題じゃないよ。
何個作れたかなんて、気にしないで。
あなたは、私と実験をしにきたんだ。私と、顔と顔を付き合わせて、
何が可能で何が不可能か、実験をするためにここにいる。
作る物がきまれば、それを完成させることは、みんなだったら
バングラでできるでしょう。
でも、一緒にいなきゃできないことってなに?
たくさんの失敗だよ。たくさんの実験だよ。不可能を可能にする、
その方法は本当にないのかどうか、試してみる。作ってみる。
クリエイションってそうじゃないか?
そのプロセスを短縮して、何個できたからボクの日本の出張は何点だった、
なんて馬鹿な発想は捨ててほしい。
最大限の選択肢を出し尽くすこと、そこに集中してやろう。」

ベンガル語で実験をポリッカという。何度もその言葉を放つ私に、
モルシェドは少しずつ顔が明るくなっていった。

「わかった。」と言って、とてもいい姿勢で、革を再び切り始めた。
そして私の再び無茶な依頼にも、こんな表情をしてくれた。

何かを作りあげることに近道なんて本当にない。

悩んで苦しんで、やってもだめで、新しい選択肢を探していく。
そんな道のりは歩いていると途方にくれるし、誰にも共有できない
マニアックな悩みも孤独もものすごい。

でも私は本当に幸せ。
動かせる手があって、夢と意味を持って、サンプルテーブルに迎えること自体が。
そして、なにより仲間がいてくれるから。

私と同じレベルで苦しむモルシェド。
そんな私とモルシェドを最大限サポートしてくれるチームマザーハウスのみんな。
みんなが私たちが集中できるようにどれだけ心を配ってくれているか。
正直、作っている時はそんな感謝をする余裕はないけれど、
必ず世の中にはないもので恩返しをしたいっていう気持ちが支えてくれている。

そして最後に、今の苦しみの先に、お客さんの笑顔があるって信じられる、
そんな環境を作り上げてくれているみんなに、感謝でいっぱい。

必ず、前よりも今、今よりも未来。

壊す。
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モルシェドはかっこうよすぎる。
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職人の苦悩 VS デザイナーのわがまま。
悪いけど絶対負けない。
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