MOTHERHOUSE

MOTHERHOUSE MAGAZINE
山口絵理子の日々思うこと。

伝承

2017.01.14

昨日も今日もジョグジャカルタの太陽や月を見ながら
ジュエリー作りをしています。

ここジョグジャカルタでモノ作りをはじめて早2年。

2回のクリスマスを、共に過ごしてきた。
というか、戦ってきた仲間たちがいます。

最初は1人だった職人さんが、今では4人。
その数はまだまだ少ないのですが、私にとっては
みんなと出会えて感謝するほど、
たくさんのことを教わりました。

ジュエリーマザーハウスの1番のこだわりは
「その人にしか出来ないものを作る」ってことです。

これはバッグの工場では難しいことでした。
1人で鞄を完成することはできません。
革漉きのベテラン、ミシンのプロ、コバ塗り職人、
色んな人が関わって1つのバッグができています。
それは本当に美しい協奏曲みたい。

でもジュエリーは違うんです。
絶対に、1人が、最初から最後までやり抜くんです。
ソロで舞台に立つ、そんな気概も、後ろ姿も
まるで違って、モノ作りとしては完全に異なる世界です。

ムギさん、ヤントさん、ワリヨさん、ウィドドさんっていう
4人の職人さんがいます。
この4人は、その人にしかできないモチーフを作っています。
花が得意なワリヨさん、スタイリッシュで強さがあるヤントさん、
ブライダルリングはムギさん。新しく加わったウィドド君は
大きくて華やかなモチーフが得意です。
最初の線の状態から、最後の磨きまでやりきります。

これはマザーハウスの哲学から生まれています。

「その人にはその人の役割がある」

これは、私は実は小学校の頃から思っていました。

どんなに目立たなくって、個性がないように思われている子にも、
どんなに何でもできそうで、完璧に見える子にも、
それぞれの役割があって、社会がなりたっている。
私は、どちらかというと日陰にいた小学生だったので
そう思いたかった、、、という部分もあるかもしれないけれど、
それが、事実、今でも自分の支えなんです。

私はそう思って、自分にしかできない役割を探して
バングラに行ったように思います。

そして、バングラにしかできないモノを作っているって自負はあります。
だからこそ、ジョグジャカルタでも、ここにしかないジュエリーを
作っています。

でももっと、深く踏み込めば、
「ああ、ムギさんにしかこれはできない技だなあ!」
「ああ、これはヤントさんの優しさが溢れているなあ!」って
毎日感動するんです。

そして、その人の人生を聞くと、なぜそのジュエリーが生まれたか
とても納得するんです。

人の手から生まれるジュエリーは、その人の人生全てを
映し出しているように思う。

強さも、優しさも、好奇心も、甘えん坊なところさえも。

そんな仲間たちと単なるモノ作りを超えて、私はなんだか
人生を分けてもらっていようなそんな感覚までもつことがあります。

特に今日はそうでした。

「新しい仲間が欲しい」って今回の出張で考えていました。

光栄にもジュエリーのオーダーに対して
なかなか追いつかない状況で、特にブライダルリングがそうでした。

それで、ムギさんに相談して、1997年から育てている弟子を
はじめて紹介してくれた。

彼の名前はアグスさん。赤いシャツを着ているちょっとイカつい男性でした(笑)。

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そして、アグスさんとウィドド君に、夜な夜な、指輪の作り方を
自宅で、教えているムギさんの動画、是非見てください。

https://instagram.com/p/BPOWBcKgFVt/

これこそが、まさに伝統を未来につなぐ瞬間なんです。

これまで光が当たらなかった技術、途切れそうな伝統工芸。
それらを生み出したムギさんと、
これからの未来を作る弟子の距離感。

私はどんなアートよりも美しいって思えた瞬間だったんです。

そして、この場に立ち会えて、なんだか心が震える感動があった。

最後にアグスさんに最初にお願いしたいリングの説明をした。

正直、(ちょっと難しいかもしれないな)って思った。

でも、ムギさんが一言言った。 

「彼ならできる。」

20年近く教えてきた弟子の前で、ムギさんが言うその言葉の
重みや、愛情。そして任せてみようって思えるムギさんの心の広さ。

全てを考えると私はこの映像を見ながらなんだか泣けてきちゃうんです。

バングラデシュに比べたら小さな村、小さな変化かも知れませんが、
確実に前へ、未来へ、進んでいっています。

そんな力を込めて、明日も新しい息吹をジュエリーに。

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