マザーハウス副社長の山崎大祐が「Warm Heart, Cool Head(熱い情熱と冷静な思考)」を合言葉に開催しているマザーハウスカレッジ。開催は50回を超え、延べ2000人を超えるお客様にご参加いただいています。
本連載では、山崎大祐がカレッジで行われたゲストトークを中心にまとめ、明日の挑戦へのヒントになるような視点をご提供します。
<後編>(株)UPQ代表取締役社長 中澤優子 氏(第45回カレッジゲスト)
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1984年生まれ。中央大学経済学部卒業後、カシオ計算機株式会社にて、携帯電話・スマートフォン商品企画に従事。「830CA」「CA007」「EXLIMケータイ」などの企画開発に携わる。カシオ計算機を退職後の2013年4月には、秋葉原にカフェを開業。
オリジナルケーキやパンケーキ等の商品企画から、製造・経営まで、すべてに携わる。2014年10月、食をテーマにしたハッカソンに参加し、IoT弁当箱「XBen(エックス・べン)」を企画・開発。同年12月には、経産省フロンティアメイカーズ育成事業に採択され、再び電気の通ったものづくりの世界へ。
2015年7月、株式会社UPQ代表取締役に就任。カフェの経営を続けながら、2ヶ月で17種類24製品を取り揃えて「UPQ」ブランドを立ち上げる。1年でプロダクト数は59、取引先は250を超え、家電ベンチャーの風雲児として注目を浴びている。
(前編:家電業界のアイドル経営者!?その裏側に見えた超合理的思考)
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昭和の時代にあった自由闊達なモノづくりが大企業から消えていく
対談の中でどんな質問に対してもロジカルで合理的な答えを出していく中澤さん。一方で人を惹きつける思いもとても大切にしています。元々の中澤さんのアクションの原点は、モノづくりを心から愛していること、そして前職の挫折経験から来ています。
前職のカシオ計算機では、携帯電話の商品開発に長く従事してきました。多くのヒット商品を生み出してきた一方で、大企業同士の厳しい開発競争の中でビジネスが急速に厳しくなり、体力がない会社から脱落していきました。結局、中澤さんがいたカシオ計算機も携帯電話事業から撤退、部署ごと解散し、一緒に開発に奮闘していたチームは雲散霧消してしまったのです。
「昭和の時代のモノづくりは良かった。」
「昔はこんな楽しい商品があったんだ。」
先輩開発者から古き良きモノづくりの話を聞いてきた中で、突然チームごと消え、そして多くの人は好きだったモノづくりが続けられなくなる、そんな憂き目に会い、中澤さんは自分ができることを模索し続けました。その結果がUPQだったのです。
「たった一人の女の子でも、モノづくりはできる。それを皆が知ってくれたら、モノづくりに従事している人たちの勇気にもなるし、次なるアクションのヒントになるはず、と思っています。」
そんな思いは仲間集めのリトマス試験紙にもなっています。ただの生産地でしかないと思われがちな中国の工場にも、モノづくりへの思いが共有できる工場はある、と中澤さんは言います。
「私は中国で生産工場を探すときに、自分の言葉で原点の思いを話します。その思いに対する反応で、その後のモノづくりがうまくいくかもわかります。プロダクトが増えて付き合う工場も増えましたが、それに伴って思いで繋がっている中国の生産工場も増えました。」
(カレッジでもモノづくりについて沢山の質問が飛び交った)
思いがあるからこそ徹底した合理的思考を持つことになる
中澤さんとの対談は今年1月に引き続き2回目。前回から僅か半年しか経っていないにも関わらず、大きな自信と進化を中澤さんから感じました。
「モノづくりが大好きだったから出来た一方で、明日モノづくりが出来なくなるかもしれないという環境があったから、必死に取引先を見つけ、必死にモノを作ってきたのです。結果、気づいたらこれだけ商品が出来ていました。」
人の成長には、思いとベースとなる経験は大切だと思いますが、そこに更に頑張るべき環境が合わさったときに、想像できないような大きな力が発揮されます。中澤さんの1年が示してくれることは、この3つが揃うことで、1人からでも、そして1年でもこれだけのことができる、ということです。
最後に伝えたいこと、それは思いは原点ですが思いだけではモノはできない、ということです。熱い情熱で目標設定をし、冷静な思考で目標達成に向けた最短距離を進む。そして、その最短距離を進むための仲間集めと推進力は、再び情熱の力で達成していく。情熱と冷静の間を突き進む中澤さんの姿勢、そしてその結果の1年から改めて大きな学びをもらったカレッジでした。
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(次回、マザーハウスカレッジのお知らせ)
次回は8月20日(土)13時半~ 本店近くのモノづくり館 by YKK
「マザーハウスカレッジ特別編① ~ブラインドサッカー日本代表が見ている世界~」
ゲストは、アジア選手権2015でブラインドサッカー日本代表のキャプテンを務めた落合啓士さんです。障がいを乗り越えて日本代表として活躍するまでになった落合さんの半生を追いながら、健常者と障がい者が混じり合い社会の実現に向けた議論を行います。
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