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マザーハウスカレッジ ~ゲストトークから~

マザーハウス副社長の山崎大祐が「Warm Heart, Cool Head(熱い情熱と冷静な思考)」を合言葉に開催しているマザーハウスカレッジ。開催は50回を超え、延べ2000人を超えるお客様にご参加いただいています。
本連載では、山崎大祐がカレッジで行われたゲストトークを中心にまとめ、明日の挑戦へのヒントになるような視点をご提供します。

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第2回 マザーハウスカレッジ ~ゲストトークから~

家電業界のアイドル経営者!?その裏側に見えた超合理的思考(中澤優子 氏<前編> )

2016.08.15

WRITTEN BY

山崎大祐 マザーハウス副社長

<前編>(株)UPQ代表取締役社長 中澤優子 氏(第45回カレッジゲスト)

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(中澤優子 氏)
1984年生まれ。中央大学経済学部卒業後、カシオ計算機株式会社にて、携帯電話・スマートフォン商品企画に従事。「830CA」「CA007」「EXLIMケータイ」などの企画開発に携わる。カシオ計算機を退職後の2013年4月には、秋葉原にカフェを開業。

オリジナルケーキやパンケーキ等の商品企画から、製造・経営まで、すべてに携わる。2014年10月、食をテーマにしたハッカソンに参加し、IoT弁当箱「XBen(エックス・べン)」を企画・開発。同年12月には、経産省フロンティアメイカーズ育成事業に採択され、再び電気の通ったものづくりの世界へ。

2015年7月、株式会社UPQ代表取締役に就任。カフェの経営を続けながら、2ヶ月で17種類24製品を取り揃えて「UPQ」ブランドを立ち上げる。1年でプロダクト数は59、取引先は250を超え、家電ベンチャーの風雲児として注目を浴びている。
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(マザーハウスカレッジで話す中澤優子さん<写真右>)

(株)UPQ。そして創業者である中澤優子さん。
デジタル家電に詳しい人であれば、その名前はどこかで聞いたことがあるはずです。逆風が吹きすさぶ家電業界にあって、僅か創業1年、それも女性ひとりで始めた家電ベンチャーが今、飛ぶ鳥を落とす勢いで加速しています。携帯電話などから始まったプロダクトも、今では電動バイクなども含めた59もの製品に広がっています。

なぜ、この短期間でここまでUPQは拡大したのか?
この疑問に対して、直感的にこう考えるひとが多いのではないでしょうか?

きっと、若い女性が家電メーカーを立ち上げる。そんなストーリーが世の中的にうけているのだろう、だから広がっているのでは?と。

確かに、「中澤優子」と検索をかけると、中澤さんの挑戦と行動力を称える記事が多く出てきます。Wikipediaに「元アイドル」と間違えられるほどのルックスも相まって、そのストーリーそのものにもたくさんのファンがついているのは事実です。

しかしそれは一面的なイメージでしかありません。今回のマザーハウスカレッジで迫った中澤さんのWarm Heart, Cool Head(熱い気持ちと冷静な思考)について書きたいと思います。

笑顔の裏にある徹底された合理的思考

「新しいプロダクトを作るときは、法規制から調べます」

その一言に、私は度肝を抜かれました。それは製品を作るプロセスについて、最初に聞いた質問に対する答えでした。

UPQの製品を見ると、適度なPOP感を持つ、カラフルで楽しいモノが並んでいます。ここから想像されるモノづくりは、中澤さん自身が作りたいものを作っている、すなわち主観に偏ったモノづくりです。

しかし、中澤さんのこの答えはそんなイメージをぶち壊すものでした。「コンセプトづくり」を楽しく始めるわけではなく、冷静に法規制を調べるところから始めるのです。例えば、新しく発売されたUPQの電動バイク。その可愛らしいシェイプと色の組み合わせからは、「法律」という言葉は全く想像がつきません。しかし、電動バイクの製品性質上、安全面などから厳しい規制が当然のようにあり、その規制範囲はナンバープレートの位置から座面の高さ、強度、ライトの照度まで多岐に亘ります。

中澤さんはまず法規制を調べ切ることで、プロダクトとして何ができるのかを洗い出し、その規制に適合した考えから、プロダクトづくりに入るのです。時にはその規制こそが、プロダクトの新しいコンセプトのヒントになることもあります。規制に忠実に合わせるだけで、無駄を徹底してそぎ落とし、シンプルで価値のある商品が生まれる可能性があるからです。

UPQバイク
UPQから発売された電動バイク「UPQ BIKE me01」

ただの主観を超えたモノづくり力

私は以前UPQの商品を見た時に、これは中澤さん自身がほしいモノを作っているのではないか、と考えていました。極めて中澤さん個人の主観に寄ったモノづくりです。

しかし、私は今回のカレッジでこの考えが間違ったものであったことに気付きました。確かに、マーケティングリサーチや合意形成的なモノづくりなど、最大公約数を捉えたモノづくりはUPQにはありません。中澤さんのみが新商品開発に従事しています。しかしこれが、中澤さんの主観によるモノづくりを意味しているかというとイコールではないのです。

中澤さんが言っていた言葉で印象的だったのは、

「私は好きなものが沢山あるのです。ファッションもギャル系からナチュラル系まで、いろいろと好きで、一つのカラーに染まることはありません。その時その時で変わります。」

この言葉が意味するのは、中澤さんが価値観の引き出しをたくさん持っているということです。そして、自分の価値観を通して、多くの人の価値観を理解できるベースを持っていることでもあります。

自分の趣味嗜好に依拠する形でモノづくりをすると、世の中の流行が自分の価値観に合っているときには時流に乗りますが、流行と共に終わってしまう可能性があります。主観に基づいたモノづくりのリスクです。しかし、多数の価値観の引き出しの中から、今求められている価値観を引き出すことができれば、社会の流れに合わせてモノづくりができるということになります。

そして、中澤さんにはもう一つ、大きな武器があります。
お客様が求めていることに対して、固定観念なく向き合えるということです。小回りが利くベンチャーであること、そして生産から販売まで中澤さん自身が関わっていることで、お客様のニーズを敏感に感じることができています。

「UPQが発売した大画面モニターは、TVチューナーは入っていません。ただのモニターなのです。これが普通の家電メーカーなら、開発段階であり得ないと一蹴されるでしょう。でも普通に考えれば、今はビデオやプレステなどにもTVチューナーがついている。だから別に必要とされていないのです。」

その結果、他社の大画面モニターに対して大きく価格を落として販売することに成功し、ヒットさせたのです。

(後編、たった一人の女の子でも始められたから、誰かの勇気に)

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(次回、マザーハウスカレッジのお知らせ)
次回は8月20日(土)13時半~ 本店近くのモノづくり館 by YKK
「マザーハウスカレッジ特別編① ~ブラインドサッカー日本代表が見ている世界~」
ゲストは、アジア選手権2015でブラインドサッカー日本代表のキャプテンを務めた落合啓士さんです。障がいを乗り越えて日本代表として活躍するまでになった落合さんの半生を追いながら、健常者と障がい者が混じり合い社会の実現に向けた議論を行います。

詳細はこちら
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マザーハウスカレッジ特別編① ~ブラインドサッカー日本代表が見ている世界~

8月 20(土)

13:30-15:00 ものづくり館 by YKK 4 2,500円

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