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モノづくりの現場からお届けする生産者便り

インド・ネパールの担当として、1年の半分以上を現地で過ごす田口ちひろ。モノづくりを職人たちのすぐそばで見つめているからこそ見える途上国の姿や、途上国駐在における心得・苦難など、リアルな声をお届けします。

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第71回 モノづくりの現場からお届けする生産者便り

インド、現地から見る状況

2020.04.29

ナマステ、こんにちは、田口です。

ものすごく、久しぶりの投稿になってしまいました。

大変な日々が続いていますが、
皆さま、お元気でしょうか。

今日、マザーハウスTVでインドからも生中継し、
パタンナー後藤さんとともに、
少しだけ現地の状況をお伝えさせていただきました。

インドは、今日でロックダウン36日目になりますが、
工房のスタッフ全員、健康状態に問題はなく、
自宅待機をしています。

中継の中で、
もう少し上手にお話できたらよかったなあ。。と、反省していまして。。
こちらの様子を、もう少し詳しくお伝えしたく、記載することにしました。
(Youtoubeはこちらからご覧いただけます!)

インドの新型コロナ感染の状況

今日4月29日の時点で、
感染者数は累計3万人を越え、
ロックダウンから一か月以上経過しているにも関わらず、
感染の広がりが止まっていません。

インドのロックダウンは、
・公共の交通機関(電車、リキシャ、タクシーなどすべて)の営業停止
・店舗,商業施設,事業所,工場等の閉鎖(ただし,生活必需サービスを除く。)
・住民は、真に必要な事情を要する場合のみ、外出可能
という、日本と比べると非常に厳しいものです。
(報道でも、外に出た住民に対して、警官がスクワットなどの罰則を与えている様子が出ていますね)

それでも、感染拡大は止まらず、
ロックダウンは、もともと予定していた3週間の4月21日では終わらず、
現在、セカンドロックダウンと呼ばれる期間に入っています。
(予定では5月3日までですが、さらに長引くのではないか、と私は考えています)

新型コロナによって顕在化した問題

ロックダウン延長がきまった4月21日行われた調査では、
(質問項目は「インド政府はコロナウイルス(アウトブレイク)をうまく処理していると思いますか」というもの)
93.5%の人が「適切に処理している」と答えたと報道されています。

モディ首相の国民に対する演説を見るたびに、
非常に強いリーダーシップを(外国人の私でも)感じます。

ロックダウンの判断は、
まだ感染が広がっていない、
かなり早い段階でトップダウンで行われたため、
人口に対する感染者数の割合でみると、非常に低くおさえられているといえ、
そういった点も評価されているのかなぁ、、と思います。

しかし、何も問題が起きていないかというと、
全くそんなことはなく、これまでインドにあった問題が、
さらに顕在化しているものが、いくつかあります。

一つ目が、社会的・経済的に弱い立場の人たちが、
新型コロナの感染ではない理由で、命の危機に追われてしまっていること。

デリーやムンバイなど、
都市部には非常に多数の人たちが、
郊外の村から出稼ぎ労働者として働いています。

その多くが、日雇い労働者で、
建築業や工場で勤務をしますが、
日雇い労働者たちは、ロックダウンによって、収入を失い、
家賃が払えなくなり、故郷に帰るにも、
すべての公共機関が停止した後、移動の手段を失なってしまいました。
(ロックダウンは、アナウンスから実行までたったの3時間半でした)

そうして、多くの人たちが、
都市から、何百キロも離れた村まで、
唯一残された、徒歩という手段で、移動し始めたのです。

炎天下の中で移動する中で、疲労によって体調を崩し、
亡くなってしまう人が、出ているのです。

政府は、この事態に対処するために、
都市から村へのバスを手配しましたが、
大量に人が押し寄せ、大混乱の事態となりました。

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ロックダウンの延長が発表された日にも、
帰省をするための手段を求める日雇い労働者たちが集まり、
警察と対立する事態が起きています。

また、現在最も感染が広がっている都市は、ムンバイですが、
その中で、アジア最大と言われているスラム街でも、
感染が広がってしまっています。

このスラム街は、
映画「スラムドッグミリオネア」の舞台としても有名ですが、
100万人以上の人たちが住んでいるといわれ、
行政は検査と隔離の対応を行ってはいますが、
完全収束には、かなり時間がかかるのではないかと思います。

スラム街だけに関わらず、
インド(だけにかかわらず、バングラでもネパールでも同じ環境を見てきていますが)の貧困層、
というか、中間層の人たちでもほとんどそうなのではないかなと思うのですが、
個人のお宅専用の水道がある人たちはまれで、
ほとんどの人が、共同の水道、台所、洗面所を使用するお家に住んでいます。

子供を地域が育てる、コミュニティーで助け合う生活スタイルで、
それは良いところもあるのですが、
今回の、新型コロナウィルスの感染予防という視点で見ると、
非常に難しい環境です。

インドの社会学者の方が書いた記事で、
「ソーシャルディスタンスがとれることは、ある種の贅沢」と書かれていたのですが、
本当に、その通りだと感じます。

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(食料の買い出しの途中で、見た風景)

日常生活がいわゆる「3密」の環境にある人たちに対する改善策が
行われない以上、状況は改善していけないのでは、と思います。

もう一つ、やるせないな、と思うのは、
報道も含めて、あまりにも多い誤解と、
そこから生まれる対立や悲しい事件です。

もともと噂話やゴシップが好きな人が多いなあと感じているのですが、
新型コロナに関しても、ちょっと信じがたい迷信のようなものが多く広がっており、
例えば、鶏肉から感染する(実際に鶏肉の需要が大きく落ち込み、価格が下がりました)、
これはある宗教団体によるものですが、牛の尿を飲めば感染しない、など。。。

それだけでなく、
医療者や警察に対して、
住民が暴行を加える(これは本当に理解に苦しみますが、そういった人たちから感染するという認識なのかなと)
事件も多数起きていたり、
感染し病院に入院していた人が絶望から自殺してしまったり。。

もちろんまだわからないことが多い新型コロナですが、
あまりにも、迷信や誤解が多いことに、
現地の報道を見るたびに、悲しくなるのが正直な気持ちです。

※上記の状況をうけて、インド政府は、4月22日に、
医療従事者への暴力に特化した罰則として6か月から最高で7年の懲役刑が設けました。
最高50万ルピー(約70万円)の罰金刑が定められています。

そのほかにも、宗教対立など、
まだまだ問題としてあげたいことはあるのですが・・
私もこれまで知らなかったことがあまりに多すぎて、
日々、勉強中のため、また、アップデートできればと思います!

ロックダウンによるポジティブな側面

暗い話ばかりになってしまいましたが、
最後に、今回のロックダウンで生まれたポジティブなケースをご紹介します。

それは、インドだけに限りませんが、
大気汚染が大幅に改善され、空気がきれいになっていること。

インドでも、去年は一時期首都デリーでは通勤と通学が禁止になるほどに、
大気汚染が深刻な問題でしたが、PM2.5の濃度が去年から60%低下し、
この20年間で最もきれいになっています。

私も、毎朝30分ほど近所をウォーキングしていますが、
今までインドの空は白っぽいのがデフォルトだったのが、
本当に気持ちの良い青空が見えるようになりました!
(ロックダウン終了とともに、この青空がなくなるのが怖い。。)

また、ITを使った新しいサービスが生まれたり、
インドでも、これまでなかったビジネスを始める人たちのニュースも出てきました。

私たちも、まだ生産は再開できない状況ではありますが、
改めて、哲学を考え直し、
未来に向けてどのような道を進むべきか、考え、
試行錯誤を続けていきたいと思います。

とっても長くなってしまった文章を、
最後まで読んでくださり、
ありがとうございます!

日々の様子は、インスタグラム(@taguchihiro)でお伝えしているので、
もしよろしければ、のぞいてみてください♪

まだこの先どうなるのかわからない状況ではありますが、
皆さまも、どうかお気をつけて、ご自愛ください。

また日本に戻って、お会いできる日が必ず来ると信じて、
いま出来ることを、がんばります。

田口ちひろ

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