Shop Development 02 2号店ができるまで
働き続けるために
「私、マザーハウス辞めます。」
2007年秋、スタッフ 矢崎めぐみの突然の一言から、物語は始まる。2007年8月21日に念願の1号店をオープンし、その店長としての命を受けていた矢崎。順調に売り上げも伸び、いよいよここからだと思われた矢先の出来事であった。あまりに突然のことに、山口も山崎も耳を疑った。
「え・・・ いったいどうしたの!?」
理由は子供のことであった。矢崎には、1歳と2歳の子供がいる。2007年4月から保育園に2人を預け、横浜の自宅から約2時間かけて、毎日入谷まで通勤していた。勤務条件については非常にフレキシブルに対応してくれるマザーハウスでは、育児中の矢崎は毎日残業なしで勤務しており、家庭と仕事のバランスをうまく取りながら、順調に仕事をこなしているように見えていた。しかし、いつの間にか通勤時間が長いということが大変な負担になっていた。
「きっと大丈夫。がんばれる。」
といって始めた仕事だったが、徐々にその歪は子供たちへと影響を及ぼしていったのである。保育園に預けていれば安心とはいえ、一日11時間もそこで過ごすということは、まだ生まれて1〜2年の子供にとっては大変な負担だった。それが表に出始めたことを懸念し、悩んだ末の決断だったのだ。
「マザーハウスは大好きだし、もっと会社のためにも自分のためにもここで働き続けたいのが本音です。
でも、子供たちの今は取り返すことができない。もっと母親として子供たちと一緒にいるべきだと思ったんです。」
矢崎の意思は固かった。また、山口、山崎も矢崎の気持ちを痛いほど理解していた。
「・・・じゃあ、矢崎さんの家の近くにお店を出そうよ!」
真剣な顔で山口は言った。
「え!!!???本気ですか!!??」

決断
職場が自宅から近いということは、多くのサラリーマンにとって理想的なことだろう。子育て中の主婦にとってはなおさら重要な要素だ。しかしそれが、小売の命ともいえる直営店の大切な場所になるとなると、
責任は重い。
「少し考えさせてください。」
矢崎は悩んだ。こんなにもありがたい話はないだろう。会社が一社員の都合で次の店舗オープンを決めるなんて。
だが、こんなにも優遇をしてもらって続けても、本当にその責務は果たせるのか。ただでさえ、「子供が熱が出た」「子供が具合が悪くなった」と、会社を休むことが多いのに、迷惑をかけずに続けていくことができるのだろうか。
家に帰ってもどうするのが一番いいのか、答えが見つからない。ソファに座っていつになく難しい顔をしていると、背中を押してくれたのは矢崎の夫だった。「そこまで応援してくれる会社はないんじゃないか、普通。先のことを考えたら、今は絶対にがんばるべきだと思う。俺も協力するから。」
家族や会社や、多くの人が協力してくれている。こんな幸せな環境の中にいて、何を迷うことがあるのか。自分ができることを精一杯やることが、すべての人につながるんだ。それにマザーハウスに入社するときに面接で誓った言葉。
「家庭と仕事は両立できることを証明したい。そして、働きたいママの可能性を広げたい。」
これを実現するためにマザーハウスに入ったのではないか。次の日、矢崎の顔は決意に満ちていた。
「やらせてください、2号店。」
スタッフは皆笑顔でうなずく。
「よし、これからまた忙しくなるぞー!」
「まず場所を決めなくちゃ。矢崎さんちの近くだよね。最寄り駅は?」
「星川です。」
「・・・どこそこ?」
前途多難な物件探しのはじまりだった。