副代表インタビュー

「今、マザーハウスはスタートラインについたところ。」
~本音で語るマザーハウスの今とこれから~

創業から15年以上が経ったマザーハウス。生産・販売合わせて10か国以上に広がり、国内では300名以上のスタッフが働くようになりました。昨今では、コロナ禍で厳しい状況の中でも「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念の元、未来を見据えて理念をカタチにしていく挑戦を続けています。今後のブランドや会社の展望、どんな仲間と一緒にチャレンジをしていきたいか、創業以来、マザーハウスを作ってきた副社長の山崎大祐へのインタビュー形式でお伝えします。

創業から15年以上が経過し、
社会が大きく変化していく中で、
マザーハウスが今
お客様から求められていることとは?

一つ目は、どんな環境でもチャレンジし続けアクションできる会社であることです。
今の時代、理想的な事を発信する人たちはすごく増えた一方で、本当にアクションで変化を起こせる人たちってどれだけいるのだろうということがやっぱり問われていると感じてます。マザーハウスの強みは、毎年商品をアップデートしていることや、新しい挑戦の結果として商品カテゴリーが増えていること、それによってお店の大きさや表現の仕方もどんどんブラッシュアップされていく、というように、理念があるからこその挑戦やアクションが本当にたくさん生まれている事実があることだと思っています。

二つ目は、嘘がない会社であるということ。
お店に立つと、お客様から「スタッフの皆さん素晴らしいですね。」などと言っていただく機会がたくさんあります。理想的なことを言っているだけで、現場を見ると全然違うとか、想いがシェアされていない会社ってたくさんあると思うんです。でもマザーハウスの場合、理念やビジョン、ミッションに向き合いながらも、お客さまと向き合っているということをとても大切にしています。どんな理想的なことをいっても、お客さまとの日々のやり取りの中に本質があると思うのです。これからも、お客さまと丁寧なコミュニケーションを続けていきたいですね。

創業10周年マザーハウス最大のお客さま向けイベント、サンクスイベントの様子。各国から職人たちも集まった

コロナ禍で、モノづくりの源流である生産地との距離は遠くなってしまっている。
製販一体でやっていくことを大事にしてきたからこその強みとは。

コロナ禍の社会問題として、世界的に工場への発注を止めたり雇用関係を解消するなど、関係性の断裂が起こっています。マザーハウスは、どうやったら工場とそこで働く人を守れるかという発想が先にあるので、こうした厳しい状況下でも、モノづくりを続けてこれました。生産地や販売地で働くスタッフやお客さま、関わる全ての人を起点にどうするかを考える。そこにマザーハウスの特異性があるのだと思います。

起業から紆余曲折があった中で、
組織を作る上で変わってきたことや
大切にしたいことは?

ビジネスの一般的な考え方はリスクを取らずしてリターンをとることにあります。そういうビジネスのルールの世界の中で外れてしまってる人たちがバングラデシュだったんです。起業当初は、あの国リスク高いよねとか、なんであんな国でやるのか、みたいなことを色々な方から言われました。でも、僕らは、むしろそこで取り残されている可能性のある人たちに光を当てるために、そんな人たちと一緒にモノづくりをしたいのです。
この想いや理念があるからこそマザーハウスは15年やってこれました。ただ、それだけではなくて、理念と同様に生産地やお店で日々生まれている「物語」というものを大切にしていきたいと思っています。

物語とは、具体的にどんなエピソードが
生まれているのでしょうか。

インドネシアのジュエリー職人であるムギさんのメッカ巡礼に行ったお話が心に残っています。ムギさんは、来日した時に、初めて日本のお客様から直接「ありがとう」と言われ、驚いたと言います。その時初めて、自分が感謝される仕事をしていたんだということに気づき、こうした経験をほかの職人にも味わってほしいと後身育成に励んでくれています。
そして、それまで村から出たことのなかったムギさんにとって、初めて海外に行き、お客様の目の前でモノづくりを実演をするということは、とても大きな挑戦でした。そして、その経験が糧となって、今度は自ら一念発起し、イスラム教徒の人にとっては人生でなし遂げたい大きな夢である、メッカ巡礼の旅に出たわけです。
マザーハウスと仕事をしたことが職人の人生を変えることに繋がった、そのようなことが日々生産地側で生まれている物語です。

インドネシアフィリグリー職人 ムギさん

きっと、お店でも沢山のストーリーが生まれていそうですね。

はい、お店でも、日々お客様との物語が紡がれています。「友人が癌になってしまい、結局その友人は亡くなってしまったけど、その方と一緒に買ったバッグは今でも友人がいるように感じる大切なモノです」と話してくださったお客さまがいらっしゃいました。
僕は、誰かの人生に影響を与えられるということは、とても尊いと思うんですよね。
生産地やお店から、毎日のようにこうした「物語」が生まれてくるから、僕らはここまで頑張ってこられたのだと思います。これからも物語が生まれるような会社であり続けたいし、その物語を大切にする会社でありたいですね。

そういった物語が紡がれる、
小売りが持つ可能性とは?

店長は中小企業の経営者であれと言われています

個人が持っている価値観や主観をどんどん発信できるような時代になった一方で、偏見による差別や、その国イコール危ないんじゃないかという拡大解釈も生まれるようになった。それに対して、リアルってこうだよって伝えることも、マザーハウスが持つ使命の側面としてあるのかなと思います。
小売りってやっぱり素晴らしいと思うんですよね。
小さく売るって書いて小売りなんだけど、小さいけれどリアル感を持った体験を、皆様にしてもらえるからこそ、小売が実は一番社会を変える力があるんじゃないかなって思っています。

マザーハウスという組織の現場を紡いでいく担い手の中で、店舗統括責任者っていう存在は、いわゆる小売りの店長とはまた違いますよね。

その原点は、マザーハウスが大事にしてきた「Think Global Act Local」というところにあると思っています。
特にお店ってグローバルなことを考えつつもローカルな存在で、そもそも地域に受け入れられなかったらやっていけないですよね。だって、一番本質的なのは、お店がその地域にできたら、物理的にローカルな存在であるということになる。
そう思ったときに、それぞれの地域に歴史や文化があって、その中で人が生活しているとなった時に、お店でなにができるかって、各店ごとに全然違うんですよね。だから、トップダウンで戦略があるんじゃなくて、地域のことを自分の頭で考えて、どうやったら受け入れてもらえるかということを考えてもらうことが必要だと思うんです。
そして、それを考える役割は、やっぱりお店のリーダーだと思っていて、だからこそ、「店長」ではなく「〇〇エリア担当 店舗統括責任者」という言い方をしてるわけです。

お店の大きさもお客さまも、そこで行われるイベントも多種多様。写真は立川GREEN SPRINGS店

ローカルのアクションとして、このアクションはすごい面白かったなっていうようなものってありますか

最近で言うと、大丸京都店さんと組んで行った施策で、京都の美大の学生さんにリサイクル社会を啓蒙するようなイベントポスターを作ってもらい、それをマザーハウスのポップアップストアの一番前で展示する機会を作りました。地域の新聞やテレビなどが取材に来たり、京都市長が見に来たりして、お店が新しい価値観を発信する場としての可能性を持っていることを改めて示すことができました。
店舗統括責任者のみんなは、地域の人たちとのコラボレーションや、地域の学校に行って出張授業や講演会など多数のアクションをしています。数えてみたら店舗のスタッフだけで、累計年間何千人の方に向けて講演会をしていたんです。未来のある子どもたちの可能性を広げるようなアクションができていることって、マザーハウスのオリジナルだなと思っています。

京都の美大の学生さんが作成したポスター

「世界に通用するブランドをつくる」という
理念体現に向けて

マザーハウスのこれからのチャレンジは?

まだ全然何もできてないっていうのが本音です。
世界に通用するブランドをつくる、という意味で言うと、2020年7月僕らは、パリへの進出にチャレンジをしました。正直、最初のアクションとしてはうまくいかなかったというのがあるのですが、一方ですごく学びのある挑戦でした。一回のチャレンジでうまくいくことってなかなかないからこそ、失敗からの学びは大切なのです。

最近、改めて欧米に出ていくためにはどうしたらいいんだろうってことを考えているのですが、スタッフみんなの活躍の舞台を、ローカルだけじゃなくって、グローバルの場にも発展させていきたいと考えています。これからもグローバルにチャレンジの数は増やしていきたいですね。

そして、小売業界がコロナ禍で非常に苦しい中で嬉しかったのは、マザーハウスを卒業していく人が例年と比べて増えていないということです。確かにコロナ禍で組織が受けたダメージっていうのは、もちろんビジネス的にはあるけれど、コロナ前と変わらず、同じメンバーと一緒にやれてることって幸せだなと思っているし、コロナが開けたら、この苦境を乗り越えてきた仲間だからこそ、できることがいっぱいあるなと思っています。

どんな人に仲間に来てほしいか

やっぱり一番は、正直な人に来てほしいです。
それは、目の前のことに流されるのではなく、自分の心の声に耳を傾けることができる人。外から見る世界と、実際に現場に行ってみたら全然違うって違和感を感じることっていっぱいあると思うんです。そういうのが無視できない人。そして、その問題に対して、自分ができることをアクションしていける人に仲間になってもらいたいです。

店長は中小企業の経営者であれと言われています

実際に社内では、どんな仲間がいるのでしょうか?

実際に働いているメンバーは、不器用で真面目な人が多い気がします。でも真面目な人が報われる社会にしたい、その意味ではとても面白い会社なのです。真面目な人や、正直に働きたい人が、評価をされる会社を作りたいと思うし、そういう人は合うんじゃないかなと思っています。
ただ、真っすぐに真面目なことは大事である一方で、いくら経験を積んでも、自分がこれだと信じたものが違うってことってやっぱある。一番大切なものは守りつつも、新しいことを受け入れることには柔軟であってほしいなと思います。社内では、「変化を恐れない」という言葉を大切にしているのだけど、一番大切な軸は持っていてほしいけど、それに対する方法論や、自分が変わらなきゃいけないことに対して、やはり柔軟であってほしいです。

マザーハウスに興味を持ってくださる人たちに伝えたいメッセージとは。

社会や世界が不安定化していく時代において、コミュニティとしての会社の役割はより大きくなると感じています。国を越え、文化を越え、お客さまと会社という立場を越えて、助け合ってひとつのコミュニティをつくっているのが、マザーハウスです。そして、そのマザーハウスをつくっているのは、ひとりひとりのアクションであり、理念に対する思いなのです。
このマザーハウスというコミュニティを自らの手で広げていきたい、そう思って下さる方に是非、マザーハウスの扉をノックしてほしいと考えています。皆で創り上げてきた会社を、これから出会う仲間と共に更に広げていくことを考えて、とてもワクワクしています。皆さんとお会いできることを楽しみにしています!