井口 はじめて山口さんに会ったのは、築地のすし屋だったんですよね!
ある日、すごく久しぶりに、大学の先輩だった山崎さんから連絡が来て、『会わせたい人がいるんだ!』って呼び出されて。
そのとき山口さんすごい大きな鞄を引っ張ってました。
山口 ああ、それ、サンプルバッグ(試作品)ですよ!
井口 そうそう!サンプルバッグ!
3人でクリエイティブとは何かってことについてずっと語ってましたね。

あの時はすべて山口さんが1人で売ってた時代でした。
山口 そうですね。あのころは「the Sense of Wonder」を聴いて、ずいぶん元気貰っていましたよ。
井口 あの「the Sense of Wonder」は、走るイメージで作ったんです。
金の麦畑の中を走るような。

今まで癒し系の曲が多かったから、自分の中では初めての試みでした。
山口 タイトルはどういう意味なんですか?
井口 「the Sense of Wonder」って言葉の意味は、日本語に直すのはちょっと難しいけれど、
「神秘、未知なるものへの感受性」みたいな感じで、
僕としては、ワクワク感やドキドキ感のような、気分を高める時の起爆剤みたいなイメージですね。
山口 なるほど。
井口 でも、その響きがとても合うなって思ってつけました。
初めて聴いたときはどう思いました?
山口 私にぴったりだなって思いました。
その時のマザーハウスの状況を考えると、歌詞のない曲が合うと思っていて、でも、ぴったりなものがずっと見つからなかったんです。
盛り上がっていくところが、私はすごく好きですね。
井口 今までの癒し系の曲と随分雰囲気が違うので、周りにも驚かれましたよ。
山口 井口さんとしては、どっちの方が好きなんですか?
井口 どっちも好きですよ!
山口さんがMaitigharとMotherhouseを比べられないように、僕にとっては、どれも可愛い娘たちですよ。(笑)
山口 そうですよね!
井口 マザーハウスが僕の曲を使用してくれていることで、僕のところに結構、感想だったり、メールをいただいたりしてるんです。

あと、ライブで演奏したときに、お客様が「実は、マザーハウスのイクスピアリでのサンクスイベントでもらったCDを2年間ずっと聴いているんですよ!」
って言ってくださって、そのCDをまた持ってきてくれて、サインをさせていだくこともあって。「えー!!」っていう感じでした。

山口さんの本「裸でも生きる」と同じように、自分の知らないところで聴いてくれている人がいて、その人の背中を押させていただけることがあるんだなって、
そういうのを実感する機会が今まであまり無かったから、すごく嬉しいです。
山口 それって、本当に嬉しいことですよね。
私もそういう経験にずいぶん励ましてもらっています。

その「裸でも生きる」の2巻の副題である「Keep Walking」をタイトルにして、今回曲を作っていただきましたが、それはどういうイメージで作ったんですか?
井口 「Keep Walking」は山口さんっぽさをあえて出さないで、カバンを持って働く女性たちをイメージしました。

聞く人たちにメッセージを押し付けるのではなく、どんなシーンにもマッチする曲にしたかったんです。
カバンって一日中持つものだし、仕事やライフスタイルも人それぞれだから。

「the Sense of Wonder」のような、意見の強い曲のエッセンスをいれつつ、カバンを持つ人のイメージに寄り添うようにしたかったんです。
山口 メッセージ性のある曲と、どんなシーンにも合う曲作りが両方できるっていつ気づいたんですか?
井口 今回でかなり悩みましたよ。かつて無いほど。

サウンドトラックや舞台・映画の作曲のほうが、規模も大きいし、本格的になレコーディングもやります。
でも、マザーハウスの作曲では、僕の個人的な思いもありましたし、マザーハウスや山口さんのイメージを台無しにしちゃいけないって言う気負いがすごくありました。
だから、完成に至るまでは大変でした。
でも工藤さん(マザーハウス広報担当)のデザインで完成したCDや、それを聴いた山口さんの反応をみて、ああ、出来上がったんだな!実感しました。

「the Sense of Wonder」との違いを出すことで、マザーハウスの濃淡みたいなものを表現したかった。
だからトーンを低めにした曲もいれました。