Eriko Blog
2009/06/26 信頼
私はバングラデシュの教訓があり、生産を自分たちで行うことの重要性は痛いほど理解している。
だからこちらに来る前から、提携工場と自前工場を並行して走らせる計画で、既に頭の中には絵が描かれていた。
昨日の夜、提携工場のビルマニさんと、私達のビジネスをスタート時点から応援してくれている貿易相のカーキさんとバサン、山崎でホテルで今後のことについて会議をした。
場所を変える必要があったのはそれなりにお互い言いたいことを感じていたからだった。
ビルマニさんの工場にしてみたら、私達の自前工場は面白くない。
生産キャパ的にも並行で行う必要があることが現実的な一番の理由なのだが。
そして衝撃的な一言を言われた。
「なんで自分の工場があるのに自分達の工場を立ち上げるんだ。自分の工員達を連れて行こうとしているんじゃないか。」と言われた。
彼のこの発言の背景には勿論私達と彼の工場の工員達の蓄積されているコミュニケーションや工員達が本当に楽しそうに私のサンプルを仕上げてくれている現実がある。
一方で、工場のオーナーでありながらなかなか忙しく工場に顔を出さないビルマニさんは工員達の気持ちや変化を把握できているかというとそうじゃない。そしてそんな発言をオーナーがすることに対して責任感、オーナーシップの極端な欠如が見える。
彼の発言を聞いた時、思わず激怒しそうになった。
私達がなぜ100人いたら100人がネパールなんかでやらないほうがいいというビジネスを「今」展開し、これだけの投資をして、住み着いてまで戦おうとしているのか。
なぜ工場と呼べる環境にはほど遠いビルマニさんの工場を少しずつ変えて、工員達のモチベーションを上げながら生産に持っていこうと努力しているか。
バサンがインドから合流した時、私と彼の工場の工員達の関係を見て、まるでマザーハウスの工場になったようだ、とポツリと言った。
いいものを作る為に、工員達みんなとの信頼関係がなければならない。
その信頼関係は日々の蓄積でしかないことなんて分かってる。
そんな最大限の努力をしたって、人間裏切られる時だってある。
でも、だからこそ、やるんじゃないか。
私は工員達には直接、自分の言葉で話しているが、工場になかなか現れないビルマニさんにはそういった背景が伝え切れていない、そのチャンスがあまりなかったのが正直なところだった。
しかし、逆に疑われるなんて、本当にショックだった。
ショックを通り越して、すごくすごく悲しかった。
彼と接する機会をもてなかった私の責任も多大にあると思う。
バサンが必死に、必死に私以上にマザーハウスのビジョンをもう一度語ってくれ、私達の提携工場に対する姿勢を説明してくれた。その言葉は仲間として胸に響くものばかりだったし油断をしたら泣きそうになるような言葉も沢山あった。2時間以上の議論が終わり、私はこれがチャンスだと思い、彼に言った。
「日本に、スポットではなく定期的にモノを輸出するというのは本当に難しいことだと私はバングラデシュの経験から思っています。
それをする為には、工場のみんなが本気で作りたいと思わないといけない。そう思ってもらうように私はあなたの工員達と接してきた。
アスガル、モルトザ、オジム、ロメス、お茶を持ってきてくれるアサックにだって、心から接してきたし、私はあなたの工員みんなのことを大好きだし、大きな可能性を秘めているし、それを信じている。
けれど私は工場長じゃない。彼らにはリーダーが必要なんだ。誰かが工場のみんなを見てあげなきゃいけないでしょう。あなたじゃないんですか。あなたの役割なんじゃないんですか。4月から今月までで、モルトザの縫製の技術がどれだけ向上したか知ってますか。どれだけの変化が実は起きているか知っていますか。サンプルだっていくつの型番を彼らが仕上げているか知っていますか。あなたは工場にいなきゃいけないんですよ。みんなとコミュニケーションを取らなきゃいけない。リーダーにならなきゃいけないんじゃないんですか。」
言い終わった後、ビルマニさんは「うん。そう思う。」と静かに言った。
労働問題がかなりのリスクであるこの地で、リーダーシップを発揮するのは本当に難しい。ビルマニさんが工場に現れないのもそういったポリティクス回避の姿勢があるのかもしれない。けれどコミュニケーションを避け続けた先にはギャップしか生まれないし、それなしで輸出できるほど日本は簡単なマーケットじゃない。
私はまだまだネパールのことを知らないのかもしれない。
けれど、今は正しいと思うやり方でまず動いていこうと思うし、今朝になって朝から工場にいるビルマニさんを見て、少しだけ晴れやかで活気のある表情をしていたのを感じた。
おはようと挨拶に来て、「下のフロアにいるから」とはにかみながら言った。
人間が作っているものだし、人間によるビジネスだから、一番難しいのも人をどう動かしていくかなんだと思う。
そんな術はどこにも書かれていないし、簡単に見つけられるものでもない。
けれど、やっぱり大事なのは、変わるということを信じて続けていくことなんじゃないかなと思う。
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