Eriko Blog
2009/02/20 女性社長
ボタンの工場に行った。
「あぁ、ボタンなんて興奮するよ〜。」と朝からとても楽しみで仕方がなかった。
到着したのは何やら家みたい。
はぁ、やっぱり。家の中でどうせカタカタ作っているんだろうなぁ。
治安が悪いためどこの工場もゲートが重い。
その大きなゲートが開いた瞬間、とても驚いてしまった。
「でっかい!」
ただの家かと思っていたら、その先に工場みたいなものがあった。
そしてただの家も4階建てで非常に立派だ。
「すっごーい。」
興奮してすぐに中に行くと、ショールームに案内してくれた。
「わー!!!すごいすごい!」
こんな工場があるなんて!!なんで誰も言わないんだー。
サンプルとしてボタンたちをかなり買い込んでいたら、
社長さんが挨拶をしに来てくれた。
「どうも。日本から、バングラデシュから、まぁバッグを作っているマザーハウスという会社の代表をしています山口です。」
「バングラデシュ?あらぁ。まぁ。日本で販売しているの?」
「はい。そうです。店舗を4店舗、来月には5店舗になります。」
「あら。すごい。」
「どうぞ上に上がって。」
「はい。」
見た目は50歳くらいだろうか。
サロワカを着て、少しお腹が出ている彼女は4階の応接室に通してくれた。
「ここが私のショールームみたいなもの、小さいでしょう。」
犬が二匹はいってくる。
「こら!」と彼女が言う。
「私、犬が大好きなの。」と笑う。
なんだかすごそうな人だなぁと直感で思った。
どうぞ、と言われソファに腰掛ける。
彼女は独りでの口は止まらない。
「だめよ。もうネパールは。」と最初に言った。
「ジェイプールにね、工場を建てているの。私はもう25年もこの国でこの国の為に仕事をしてきたのに、来年60になるなんて時に、こんな問題が起きるなんて。マオイストがやってきてね、ついにほとんどのワーカーとさよならしたわ。」
彼女は悲しげに、でも同時にものすごいフラストレーションと共にそう言った。
それからスタッフらしき人が入ってきて、「明日のアメリカ行きのチケットは確認取れました。」と告げた。「OK。」とだけ言う彼女。それからこちらに振り返り続けた。
「バイヤーが本当に突然来なくなったの。だからもう私が行くしかないの。世界中回ってもう一度バイヤーを見つけてこなくちゃいけない。だから明日アメリカに行くの。」
国の政情不安で自分の工場が問題になれば、勿論バイヤーだって来るはずがない。
そんな悪循環の中、彼女は純ネパール人でありながら60歳にしてインドに工場を作ることを決心したのだ。
本当に複雑な思いなんだろうなぁ。
「すごい緊張のしっぱなしでもう本当にいやよ。」本当に疲れた様子でそういう彼女は「この国は終わったのよ。」とボソっと言った。
これまでものすごい経験をしてきたんだろうなぁ。そんな風に感じた。言葉に重みがある。
聞くと、女性起業家として、或いは社会起業家として多くの国々で賞をもらっているらしい。そしてかなり有名な人らしいと後から聞いた。
「インドの工場はどうなんですか?」
「ものすごい問題ばかり。インド人なんて大嫌い!」とバサンを目の前に言いたい放題。
「イスラム教は本当にやっかいよ。もう絶対にあの人たちとは仕事なんかできない!」という。
彼女があまりにも自分の話ばかりするので、私は聞く側で自分のことは全く話していない。なので彼女は私がバングラデシュにほとんどいて工場を動かしているとは全く思ってもいないので、内心面白がってイスラム教の人たちとの格闘話を聞いていた。
1時間以上話しただろうか。
最後に彼女は「私は一人身だから本当に心細くてね。友人なんてさ。仕事が成功している時には集まってくるわ。でも今はどうよ。誰一人いないわ。」
突き放すような感じでそういう彼女が本当に可愛そうに思えた。
それに、ここまで彼女の人生を捧げてやったのに、本当に悔しいだろうな。
私はずっと彼女のことを考えていた。
私が彼女だったら、どうするだろう。
60歳になったら、どこで、なんという言葉を発するのかなぁ。
彼女のように、また違う国で新しい出発をしようとしているのか、
家のリビングでゆっくり本でも読んでいるのか、
或いは全く違う世界で全く想像もできないことを考えているのか。
どうなんだろう。
ネパールの夕日を見ながら考える。
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